2012年11月4日日曜日

11/02/2012 David Grisman Sextet special guest David Lindley @ UCLA Royce Hall

先々週に引き続いて、また赤ん坊になってしまった。 

はじめてこのショーの事を知った時、嘘かと思って狂喜乱舞。飛び上がった。
この二人が一緒にプレーするのか、ありうるのか、成立するのか。
マスターであり、自分のヒーロー二人が共演。でもLindleyがアメリカーナをベースに国籍不明なフージョン弦楽器音楽。Grismanがブルーグラスベース+ジプシースウィング=Dawgという。ちょっと音楽性が違いすぎないか?と思っていたら…
なるほど共演というんじゃなくてオープニングアクトがLindley Soloということだった。
どうであれ、ダブルメインアクトといってもいいこのショー。

後先考えず、とりあえずことチケットを買ってしまった。最前列で$60。安いもんだ。


さてオープニングのDavid Lindley。
最新アルバム”Big Twang”から、Warren Zevonのカヴァー。”Beneath The Vast Indifference Of Heaven。” アルバムではアコギ一本で泣かせる感じだったし、最近見たショーでもこの泣きバージョンでやっていて、すさまじい緊張感あふれる演奏で絶句した覚えがあるが、今回はちがった。ラップスティールで演奏ということもあって、メジャーキーが基本の根アカバージョン。これはこれでかなり完成度が高く、うなってしまった。その日の気分でヴァージョンを変えるのかなー。どうであれ、お気に入りの一曲が聞けて大満足。
あと、最近のショーでは必ずやる”Little Green Bottle”。デキセドリン中毒、実況中継バージョン。”Twango Bango II”に入っているのは、あっさりとした3分バージョンだが、これがライブになると、デキセドリントリップの実況が聴ける。場内を爆笑の渦にたたきこむこの曲。コミックソングともきけるけど、途中聴かせどころはじっくりバッチリ締める。
The State of Arkansasをはさんで、これまた目が回りそうなくらいにぶっ飛んだ7/8 Suite。
これこそLindleyの真骨頂ともいえる演奏だった。例によって、あれはなんだろう、中近東の弦楽器だろうか。もしかしたらOudかもしれない。でもボディーが平ったかったからOudではないか…Lindleyのウェブページにものっていないので、わからない。
そのエキゾチックな楽器を手にして、ポロンポロン前奏のような手慣らしをはじめた時点で空気感が一瞬で変わった。どこか行ったことがない場所のような、香辛料のスパイシーな香りがながれ、砂の上に座っているような感じになった。駱駝や象が夕焼けの中を歩いて行くようなこの曲。Traditionalのようだが、こんなの聴いたことない。
ベテランの凄腕ミュージシャンはいつもそうなのだが、いい演奏をする以上に会場の空気を変える能力にとても長けていると思う。抽象的なものの言い方でうまく伝わるか不安だが、実際にはステージで静かに演奏しているだけなのだが、曲が変わった瞬間にパカっと背景が変わったかのようになる。
特にLindley氏の場合、ジャム系のミュージシャンでない。なので一曲一曲完結した世界が、緊張感をもって描かれる。また一人でのステージなのでちょっとしたミスが大きく響いてしまう。
しかし、こんな不安はみじんも感じさせない、リラックスした余裕のステージだった。 Jorma同様、音が自然にLindley氏についてきている感じ。特別に力入れるのでなく、普通に音を出せば素晴らしい音が出てくるという。いつも通りあまりの音の緻密さにやられました。

さて20-30分の休憩をはさんで、David Grisman Sextet。実はLindleyより一歳年下のGrisman。昨年末のBluegrass Experience以来。Bluegrassは実は自分にとって結構とっつきにくいジャンル。恐らくハマるとそれ以外は聞かなくなるほどになってしまいそうだが、今のところまだそこまで行っていない。どうであれ、前回のGrisman experienceは、興味深かったが、観終わった後、若干疲れていたのを覚えている。

が、今回はそうではなかった。本腰を入れたBluegrassではなく、Dawgだったからかもしれない。
これも、2012年の今聴くと恐ろしくスタンダードっぽく聞こえるんだけど、実は彼が60年代だか70年代だかに「Bluegrassの楽器」マンドリンを持って、ジャズやらジプシースウィングやらとBluegrassをミックスしたフュージョン音楽をやっていたGrismanはかなりの異端児だったのは容易に想像がつく。

彼がコンサート中に言っていた事。Bill Monroeが彼の最初のヒーローで彼の曲をコピーしまくった。ソロも含めて完ぺきになるまで練習したらしい。で、Bill Monroeに結局「さて、もう君は僕のように弾けるんだから、自分の道を行きな」と言われ、オリジナル曲を作り自分のギグをするようになった。そしてその時点でBill Monroeのコピーをやめた。
そして、Billが亡くなった1996年、コピーをやめた時から亡くなるまでのBillの道をまたトレースしたそうだ。

昨年のライブの後最新のBill Monroeカバー集も含めいろいろ聞いていたのが良かったのか、今回のセットはすんなり入ってきた。Bluegrass色はかなり薄めで、ジャズが濃かった。特に印象に残っているのはHappy Birthday Bill Monroe、Shady Grove、Minor Swing、Opus。ここらあたりか。Garcia/ Grismanからの曲もかなりよかったし、あとWatson Bluesも渋かった。
GrismanのセットはドラムGeorge Marsh、ウッドベースJim Kerwin、フルートMatt Eakle、ギターGrant Gordy、フィドルMike Barnett、そして、マンドリンのDavid Grismanがソロを回しあうという形式で一切が進んでいった。
みなとても上手だが、曲によって「特に誰のソロが良かった」という感じになる。皆がソロを回し終わるまで曲が終わらないので、Grisman色は案外薄かったように思う。
さすがに彼のソロはどの曲でもピカいちだった。Lindleyもそうなのだが、ソロに対するアプローチの仕方が、ロック/ブルースからではないのでかなり異質に感じる。
Grismanの場合マンドリンというギターとは違ったシステムの楽器なので、ギタリストの自分からみたら「一体どこからそのソロを引っ張り出してきたの?」というような摩訶不思議な音選びのソロを、100年も前から親しんできたかのようにいとも容易に弾かれるのには参った。
バックグラウンドが違うというのが、まさにこんなところで強烈な個性となって現れることになる。
もじゃもじゃのひげをたくわえた大柄なアメリカ人が、おなかの上に小さなマンドリンを乗っけて身体を揺さぶりながら、ローラーコースターにのっているかの様な音をつむぎ出す。フレットの上をものすごい早さで指がタカタカタカタカと動き回る。
その様子はとてもコミカルだ。でも弾いている曲の印象からか、どことなくセクシーさがただよう。
Lindleyのようにエキゾチックな絵をくっきりと見せてくれるのでなく、Grismanのステージはどことなく匂う。ヨーロッパの街のにおいがする。アメリカ中部はアパラチアのヒルビリー達がたむろっているバーのにおいがする。

いずれにせよ、多国籍州カリフォルニアならではのショーだったと思う。
アメリカーナを基本にして、いろいろなものが、もちろん不純物も含め純度が高いショーだった。
行ってよかった。 

0 件のコメント:

コメントを投稿