2014年1月25日土曜日

01/24/2014 Stick men @ Harlow’s, Sacramento, CA



いやー最高だった。
理屈が分からない分、ポーンと入ってきた。

しかし、理屈っぽい音楽が嫌いだというただそれだけの理由で「プログレッシブロック」というジャンルは自分からとーてーもー遠いところにあり続けている。
しかも、クラシック音楽とロックとはあんまり相性がよくない、と思う。
クラシック音楽単体では好きだし、ロックも好きだ。でも混ざると面白さが半減するような。
相性という面で言えば、ジャズとロックの相性の良さとは全く逆で、おもしろいなーとおもう。

クラシック音楽の訓練を十分に受けたミュージシャンが、頭の中で温めた音を譜面におとして、それを何のよどみなくすらすら弾けるようになるまで訓練し、音質も重箱の隅をつついたような目新しさでマイクロマネージ。できました。発表会では日頃の訓練の成果もあってノンミス。
そんなのは聞いててスリリングじゃないだろう。ロックじゃない。
そう思っていた。

つまり、今回のTony LevinのStick Men、全く期待していなかった。
ところがどっこい。
これが凄まじかった。
一曲目からアンコールまで最前でかぶりつき。またやってしまった。

単純に大量に訓練を積んだミュージシャンの音は、どんなジャンルであれ気持ちがいいらしい。
曰く、ミュージシャンシップのすごさ。
見た事もないような訳の分からない楽器をいとも簡単に操るというのは、それだけで圧倒的な威圧感だった。
このチャップマンスティック(http://www.stick.com)という楽器。ギターの弦の上にベースの弦が上下逆向きでついているという。都合10弦。
それをフラットピックでかき鳴らすや、フィンガーピックでつま弾くではない。
指でフレットボードをタップして音を出す。ベース弦もある分、ヴァンヘイレンやスタンリージョーダンの奏法の応用編。



なんでこんな高度にわけの分かんない音楽を、しかもかなり手の込んだ加工した音で、でもなんの澱みもなくスラスラと弾く。いちいち楽しそう。
特にTony Levinは。
他のメンバーPat Mastelotto, Markus Reuterは単に仏頂面(特にMarkus 笑)なのだけれど、Tony Levinの愛嬌の良さや普通の人っぷりは、その出ている音とのギャップとの間で、凄まじく異様に感じた。
しかもあの風貌。超細身。スキンヘッドに口ひげ。んーコワい。
Adrian Belewを見たときも同じ印象をもった。このKing Crimsonの人たちのヘンさ加減はいったいどこから来たのか。

謎は深まるばかり。

でもあんまり深入りすべきジャンルではないような気もする。
感覚的に。
端から聞いているレベルで満足できそう。

2014年1月18日土曜日

01/17/2014 David Lindley @ Sebastopol Community Cultural Center, Sebastopol, CA




待ちに待ったDavid Lindleyのショー。
10月からBerkeleyでひとり暮らしはじめてから急に時間ができた。
久々のひとり暮らしでなにか変わった事が起こるのかなと思っていたけど、別にそれ程でもない。
淡々と日を暮らす中で小さな楽しみを噛み締めるような地味ーーな生活。こんなのは学生時代ぶり。

働いていないおかげで、ギターの時間が増えた。

起きてから寝るまで、食事の時間とたまの昼寝の時間シャワーの時間を除いて、目が覚めている時間は大体ギターを弾く。
14時間起きているとしたら、最低10時間は弾く日々が続いた。

今までしたかったのにできなかった、FPRで録りためたギターのレクチャーの復習をはじめた。
今までキモック分が3年。ミスターデイブ分が1年。
それぞれ4日間にわたる録音は膨大だ。

キモック2010年分の録音は過去に2回聞いた。
キモックと同時にリンドレーに取りかかったところ、今年に入ってリンドレーの方に完全にはまってしまった。
楽しくてしょうがない。
愉快なおっさんが、みんなのジョークを聞き爆笑しながらのレクチャーは他にはない。
しかもとてもわかりやすい。
誰もがたのしんでいる、この空気。
ファーピースランチ。また今年の5月にもやってくる。いけたらいいなー。

こんなだから、一言一句聞き逃さず、ノートを取りながらここ数ヶ月聞き続けた。
もちろん、ギターを弾きながら。
昨年の5月のギターワークショップに出たときは、ビギナーだった。知識ゼロ。
ラップスティールをどう練習したら上達するのか知りたいという気持ちしかなかった。
FPRから帰ってきて、ルーティンの日々が始まった。
大きな音でギターを引き続けた。ミスターデーブが言った通りに練習した。

Meat Grinder Bluesで始まったショーはMonkey Wash Donkey Rinseをはさんで、アンコールのCat Food Sandwichで終わった。
完璧なショー。

Setlist

Meat Grinder Blues
Cuckoo
Beneath the Vast Indifference of Heaven
Pretty Polly
About to Make Me Leave Home Girl
Little Sadie
8/7 Suite
Mutineer
Johnson Boys
Monkey Wash Donkey Rinse

Encore
Cat Food Sandwich







今回のセットでは基本はいつも通り。
しかし、「いままで、ほとんど演った事がないのを試してみよう」という前触れで始まったMeat Grinder Blues、最高。
Bonnie Raittのカヴァー、Leave House。
大好きなMonkey Wash Donkey Rinseがナマで聞けたのは大感動。
Warren Zevonのカヴァーが合計3曲。Beneath, Mutineer, Monkey。全てWarrenのアルバムMuniteerから。
Cuckoo, Pretty Polly, Johnson boys, Little Sadieは全てトラディッショナル。

ショーの後はいつも通りのCDサイン、写真撮影がロビーで始まった。



みんながそれぞれ話し終わったのを見計らって、スッとDaveの前に出てみた。
「あーーー」
みたいな声のような声じゃないようなののあと、驚きの笑顔で、そしてハグ。
ミスターデーブは、FPRで会った奇妙なアジア人を覚えてくれていた。
「MCで僕の街の名古屋の事に触れてくれてありがとうございます、とても嬉しかったです。あの曲のインストでは河内音頭のテイストも入っていて...」
「ちょっとだけだけどね、聞いててわかった?」
「そりゃわかりますよ、和風テイストについては日本人の僕にはすぐわかりますよ。日本を思い出せてもらえて嬉しかったです」
「あの河内音頭が聞こえてきたバーは、最初俺は入ろうよ、って言ったんだよ。そしたらプロモーターがさ、
ノーデイブ。あれはライトウィングの人たちが集まるバーで、彼らは必ずしも外国人が好きじゃないんだよ。って言うから、じゃーやめときましょーってさ。」
「そいうえば、あれからかなり練習しました。一曲聞いてもらえないですか?アドヴァイスがもらえたらと思って。」
「シュアーーーーギター持ってきな」

ギターをトランクから出しながら、震えている自分に気がついた。
だいいち、デーブの「シュアー」の声が一段と低かった。
天下のDavid Lindleyにギターを聞いてもらって、アドヴァイスをもらおうとしている自分のあまりの無謀さに笑えてきた。

ミスターデーブの大ファンのスティーブ(もちろんキモックではありません)が隣で、おいおいマジでやるんだな、こりゃすごい事になったな、と言っている。
煽るな煽るな
でも面白くなってきた、こりゃ言い出してしまった以上やるしかない。

外でチューニングを終えて、ロビーでいすを借りた。
座ってポロンポロンやっていると、デーブが肩越しに近づいてきた。あのときの緊張感は忘れられない。
「どんなもんだ?」という声が聞こえてきたので、スライドバーを引きずって音をふるわせてみた。
アメリカーナのヴィブラート、次にブルーズのヴィブラート。

これならいけるかも。

意を決してリズムを刻みはじめた。
“Old Coot From Tennessee”
「テネシー出身の変わったおっさん」というタイトルのトラディッショナルナンバー。
そのおっさんは教会にも行った事がない。神を信じない。
人生はあがいても変えられるものではないから、毎日たのしむ事を旨として生きている。
彼はうたをうたって、みんなに気づかせた。
「俺はぴょんぴょん飛び跳ねたり、大声でわめきちらしたりしながら、なんだかんだやって生きのび、そして死んでいくんだ。
俺のこの人生は全然うまい事いってない。あんたらは俺が死んでから俺の事をごちゃごちゃ言うんだろ、でも言いたい奴には言わせておくさ。
俺はぴょんぴょん飛び跳ねたり、大声でわめきちらしたりしながら、なんだかんだやって生きのび、そして死んでいくんだ。」
という。

ソロを弾きはじめると、キツくなってきて一か所でミスった。
Mr.デーブはノリノリで僕の肩越しで踊ったり一緒に歌ったりしていた。
ミスった瞬間にデーブ大笑い、「俺もここでいっつも間違えるんだー」
ちょっとリラックスしたためか、難しめのリフが難なくできた。
「ひぇーYou got it」

結局2題目の歌って、ソロに行ったあたりで周りの注目のからストレスアウト、残念ながら爆死してしまったのだが。
「どんな感じだった?」と立ち上がってたずねたときのデーブの笑顔と言ったらなかった。
いまだかつて人間のあそこまで幸せそうな顔を見た事がない。
「一目ユーが弾いているのを見たときから、お前が大丈夫だっていうのを分かってたんだよ」
とビッグハグ。あまりに光栄で歯の根元が1センチくらい浮いたように感じた。
「ヴィブラートちゃんとできてましたか?」
「ああ。ウマくできてたよ。それにしてもリズム刻み。格段にうまくなったなー、いくつか失敗しているのには気がついたけど、それも気にせずにガンガン進んでいったのはとてもいい、そうでなければならない。この歌はとても高いから歌いづらいだろ、カポ使いな。今年のFPRは来るかい?」
「いけるか分からないけど、是非いきたいと思ってます。」
「教えるべき事がまだまだあるんだ、違ったチューニングの事についても、あるしハンマリング、プリングオフなんかについてもね。」
「あー道は長そうだー。」
「笑」

生きていてよかった。


これ以外に言葉が出なかった。
実は自分の度胸にも驚かされた。
後になってちゃんと3題目まで歌わなかった事が悔やまれた。
あそこで爆死してはいけなかった、だましだましでも引き続けて3題目まで行くべきだった。
いまだに悔しくてしょうがない。
今年の5月、FPRで彼の前でリベンジする。
今度は失敗してもつまづいても、最後まで弾ききってやろうと思う。

2014年1月12日日曜日

01/11/2014 Jerry Miller and Terry Haggerty Band @ Ashkenaz, Berkeley, CA






今すんでいる家から歩いて10分。Ashkenaz。
Berkeleyという街は変テコな街だ。
閑静な住宅街が主なんだけど、ダウンタウンやテレグラフにはとんでもなく妙な輩がいっぱいいる。
僕もどちらかというと妙な輩なんだけど、閑静なところに紛れている。

それはさておきバークレーはレイドバックな街で住みやすい。ラディカルだと言われながらも、サンフランシスコのようなハードコア感、ギスギス感はない。
でもエンターテイメントがサンフランシスコやオークランドに比べるとイマイチ。
というのは大きなフィルモアだとかヨシズのようなライブベニューが少ないように思う。
いい感じの大きさのハコは、ダウンタウンのフライトアンドサルヴェージ(Freight & Salvage)、ウェスト/ノースバークレーのアシュケナズ(Ashkenaz)、ギルマンのパンククラブ924。いずれもノンプロフィット。
あとグリークシアターがUCBerkeleyにあると言えばあるが、その規模でコンサートができるアーティストは限られる。デッドとかディランとか見た。
もうちょっとナイトライフを充実してもいいと思うのだが、市が許可しないらしい。
エンターテイメントはダウンタウンの一か所に集中させる計画で、他では許可がおりにくいという話だ。
なぜか?ちょっとでも騒音を出すとバークレー市民はすぐにクレームを出すというのが理由らしい。
その反動ともいえるのが、カフェ。これはそこらじゅうにある。
カフェではいつもジャズバンドが小さめの音だが毎晩いい演奏を聞かせる。

Terry Haggertyともサウスバークレーのカフェトリエステ、そこで出会った。
KVHHのショーには間に合わなかった。もちろんSons of Champlinも見ていない。
僕の中では彼はとんでもないモンスタージャズギタリスト。小さなカフェでとんでもないことをしている、ガタイのでっかいおっさんというのが僕のTerry像。

数年前から追っかけはじめて一押しのバンドフォーメーションがコレ。
Jerry Miller & Terry Haggerty。
ラウドだから。
ジェリーの破れかぶれでブライトなブルーズギターと、テリーの抑えたジャズインプロギターのコンビネーションが絶妙。
レパートリは多分ジェリーサイドの曲がほとんどで、ロック/ブルーズという王道な感じなんだけど、ここに「なんでもこい」テリーが有無をいわせないような凄まじいギターで畳み込む。
今回もいつも通り。
ジェリーはミュージックマンのアンプでIbanezのAFSってタイプだと思う。それにTSをかませるだけのシンプルなセッティング。
ピックアップは終止ネック側で固定。あとはトーンはフルアップで、ボリュームコントロールを少々。
これだけであの気味が悪いくらいブライトなトーンが出るってのはすごい。
歌うときはリズムを刻み、歌わないときは終止フィルイン、もしくはほとんどソロばっかり。
テリーがソロをとっているときでも関係ないところで、おもしろい事をしていたりするのもコレまたすごい。ほとんど邪魔になっていないからだ。
でもたまーに邪魔だ。つまり意識してソロのスペースを共有していない。

ブルーズ命。右端がテリーの奥さん、ケイティー。

テリーのセッティングはわかりません。今度直に聞いてきます。
ギターはいつものへんてこなギター。キャビネットはBrownってかいてあった。見たことないでっかいのが2台。それにプリアンプがTwo Rock。
前はケンタウロスで歪ませてたが、今回はアンプのスウィッチで歪ませてました。
この歪みこそ、最近の彼のシグニチャーです。ベイエリアのサイケシーンのアーティストのなかでは多分一番深く歪んでると思う。
ファズと言ってもいいくらい。
彼のアルバムFirst Takeでも。いいよーこれ。
http://www.cdbaby.com/cd/terryhaggerty2

存分に畳み込み中

今回は会場の奥で携帯いじってたら、テリーさん「ヘーイ!」ってな感じで来た。
彼はFPRに行ってギグをしてから、一層仲良くしてもらっている。
彼の奥さんのケイティーも来た。そしたら、元の奥さんとの間の息子も来て紹介された。
元の奥さんも見た。「超ハードコアヒッピー、現役」というのが第一印象。
Berkeleyは色々な意味でどこからも近いので、色々な人が来て今回はファミリーショーのようになっていた。

「今度電話するよ」
「オッケー」
今度彼からギターのレッスンを受ける予定。