2012年6月17日日曜日

6/16/2012 Moonalice, David Nelson Quartet @ First Presbyterian Church

















Cedars of Marinという団体へのベネフィット。Cedars of Marinというから、杉の木の保存会、緑化運動のたぐいかと当初は思っていて、花粉症の私にとっては杉というのは天敵に他ならないので、そんなベネフィット行くか!と思っていたのですが。 
ホームページを開いてみると、サンアンセルモにある発達に障害のある方への支援団体だということが判明。DNBのページを見てみるとPete Searsの娘さんがそこで働いているそうで、「これは大変重要なことで、草の根的なベネフィットで、とても大きな意味を持つものです。ぜひ来てください。」とPete直々のお言葉がホームページに載っている。 

このアメリカという国は、非常に社会的な弱者に対して理不尽なところがあるように思う。この前も郊外の町を、昼間車で走っていたら、明らかに普通の精神状態じゃない中年の女の人が宙に向かって何かしゃべりながら寝間着のままで歩道を歩いている。サンフランシスコのような街なら案外よく見かけるが、こんな郊外でというのが意外だった。 
それがどんな理由でそんな状態なのかは知らないが、どんな理由であっても道端にほおっておいてはいけない人。どこからどう見ても危険だ。 
レーガンだかの政権の時代に、こういう人へのバジェットカットをしてしまって、軒並み施設が閉じてしまい、結局こういう人がストリートにほおりだされる結果となったらしいが、どうであれレーガンって何年前の話だよ。 
何も期待のできない政府に対してこういうCedar of Marinのような受け皿が必要なんでしょう。もちろんこのおばさんが発達障害かどうかはわからないけど。 

というわけで行ってまいりました。 

場所はサンアンセルモの教会。アコースティックは結構いい。 
出演バンドはMoonaliceとDavid Nelson Quartet。 






Moonaliceというのはとても微妙なバンドで。 
今回は不愉快御免で、ド正直に書きます。私個人の記録目的ってことでございまして、独り言です。 
タネあかしから始めると、Roger Mcnamee, Ann McNameeというミリオネア夫妻がBerry Sless, Pete Sears, John Moloという腕利きのミュージシャンたちを集めてやっているバンド。数年前から北カリフォルニアを中心にかなり精力的にギグをこなしていて、それなりにファンベースもできてきつつあるバンドです。 
ただ、どうしてもそういうあまりにロックっぽくないバンド編成の経緯がたたって、わたしは「好きじゃないな」ということで、今までほとんど追っかけようとすらしなかった。 
金持ちの道楽バンドに、どうして金を払って見に行きたいと思いますか? 
今回はそういった偏見を捨てて、とにかくしっかり見てやろうと思って、まだ人もまばらなステージ真ん前、最前列で、かじりついて見てきた。 



結果何を感じたかというと、やっぱりRoger, Annの二人が甘い。甘いというのはヘタという意味ではない。むしろそんじょそこらのミュージシャンよりは格段に上手いし、前見た時よりも上手くなってきてはいる。 
ただ音楽でメシを食ってきている他の三人の音への感情移入のレベルに比べたら、彼ら二人の行き届いてなさは日の目を見るより明らか。 
ここで静かにってとこでとんでもなくフラットな音を延々と出していたり、しっかり決めるべき歌いだしでピッチが若干浮いていたり。 
こういう場所で他の三人は絶対にはずさない。これが凄い。やっぱり、音に覚悟があるというか。食いっぱぐれない音。これは微妙なとこで、見逃してしまいそうなところなのだけど、そこで完全に昇天させられるか、「おーいいね」で終わるかが、決まる。 

これは技術というよりセンスなんだろうと思う。ジャムする上でのセンス。センスは天性のものではない。日々の生活で磨いていくものであり、研ぎ澄ましていくものだと信じている。それはただ楽器を持ってスケール練習をひたすらすれば身につくものではなく、自分の中にあるフィーリングに敏感になり、それと演奏を結びつけるための訓練。なにかと引き合いに出して申し訳ないが2年前オハイオでKimock御大はこの練習が結句一番大切だ、と強調していた。毎日一番時間をかけてやっているとも。 

話がそれてしまったが、Roger、Annともにいいミュージシャンだ。でも、とんでもない他の三人の横に立つと、自然と子供と大人くらいの差が出てきてしまうし、彼らもそれに気が付いている。彼らが一歩引くとジャムが突然ホットになるんだから、気が付かなきゃ、それはミュージシャンとして鈍感すぎるだろう。 

ここがわかんないのだ。 

彼ら2人もミュージシャンとしてのプライドがあると思う。よりいいミュージシャンとジャムりたいってのは、希望としてはとてもよくわかる。しかしそれを人前で見せる必要がどこにあるのか。 
極端な話、お金があって彼らを雇えるのならば、彼ら三人に自分の好みなセットリスト作ってギグさせて、客として特等席かなんかで見てればいい。そこにレベルの違う自分が入る必要はない。と私がミリオネアならそう判断する。 
で、たまに「一緒にジャムらせて」、とリハーサルに飛び入りさせてもらったりして、個人的に楽しませてもらう事はあっても、人前で自分の至らなさをさらけ出すことはしないだろう。恥ずかしいし。 


 


こういうことは私自身も音楽をする立場である限り言っていいことのようには思わない。すべて自分を棚に上げてのことだからね。一緒に飲みに行って、こういううんちくをたれる相手もいないし、ここでぼやいているってだけです。



 

さてお次のDavid Nelson Bandこれも最前のど真ん中でかじりついてみてました。が、オーディエンスの密度が違う。少なくとも前の方はかなりがっつり入ってまして。 
相変わらずオーディエンスはかなりコアなヒッピー、つまり不気味な雰囲気 苦笑。
勝手に人の写真を撮るなっつの、本当に。アジアンがそんな珍しい? 
そうなんです、なんなんでしょうね。顔に変なものでもくっついてて面白かったのか、数人から無断で写真とられたり。そんなこと他のコンサートではないんだけどね。そんなもんとってどうすんだ。ステージの人をとれよ。 
まぁ、そんなこんなで。こういうのって結構大切なんですよ。音楽に集中できる環境をオーディエンスが作っているか否かってのは。 





どうであれ、DNBはよかったよ。もう最高ですね。昨晩はMookieがいなかったのがちょっと残念でしたが、それでもやっぱ4人の上手さ。安心してみてました。David Nelson御大の69歳の誕生日だったこともあり、ステージ上はいつもと比べると若干ほんわかムード。Mookieがいなかったこともあるけど。

最近見られた煽り合いも、昨日は実に穏やか。誕生日だからと言って特別な計らい(ケーキが出てくるとか、紙吹雪が舞うとか)が、全くなかったのがまた御大らしくていいよね。 



Happy Birthday!!とかオーディエンスが叫んだりすると、ちょっとはにかんだような表情もまた御大らしくていいよね。 
Phil Leshより3歳年下。Jerry Garciaより1歳年下、David Lindleyより1歳年上。 
長生きしてほしいよね。 
とにかく昨日はベイエリア、とても暑くて30℃以上はありました。 
しかも教会のなかは非常に暑く。人口密度の濃かったステージ前は40℃近かったのでは。 
照明が当たるステージはかなりなものだったでしょう。そんなこともあってか御大は若干歌詞を忘れがちだったというのも、ご愛嬌で。笑 

2012年6月10日日曜日

6/2/2012 Ernest Ranglin with Vinyl @ GAMH



A型だからか、なにかと分類したり整理したりするのが好きなのだけれど、どのように分けるかによって見方が変わり面白い。
人間は生物学上ヒト科というものに属して、wikiによるとパイオニアとかいう宇宙船にも未知との遭遇に備えて、「私たちはこんな身体をしています」というネームタグのようなものまで絵に描いて載っけているらしい。オトコが手を振っていてとても不気味。こんな絵で自己紹介なんてアタマのいい生物がやることじゃないと、瞬時に思ってしまった。

話がそれたが、ヒト科の中でもいろいろな分類が可能で、人種なんてのもなかなか楽しい。人類みな兄弟といっても身体の機能がちがう、生まれも育ちも違うとなると、同じヒトであっても結局全く違う生物のように思ってしまうことも多々ある。
特にアメリカのような多民族国家に住んでいると、それはいやがおうにもくっきりと感じさせられることになる。

さてこのErnest Ranglinという名の80歳の誕生日を迎えられたヒトは、私がイメージする80と全く違った。
80歳のヒトというと自分の祖父母より若干若いくらいの計算になるが、自分のおじいちゃんおばあちゃんが80の時にこんなに踊って笑ってたかというと、それはなかった。
Ernestはみんなで作り出したリズムに乗って、ギターを弾ける喜びに満ちていた。自らが紡いだ音をちぎっては投げ、ものすごい速さでちぎっては投げ。その音の一つ一つがポジティブで飛び跳ねているのだ。
あれはすさまじいエネルギーだった。磁場。

よくデパートなんかに行くと、子供用の遊び場があって、そこにはカラフルなプラスチックのボールが無数にしきつめられているプールがあったりする。そのボールを終始ぶつけてくる困ったADDの子供の様だった。
人は歳を取ると子供にもどるってのは本当みたいだ。

やっぱジャマイカンミュージックはベースがキてないと嘘だ。
とてつもなくへヴィーなベース、特にYossi FineとIan Herman(Mickey Hart Band)のコンビネーションが最高だった。SFのブラスバンドVinylがErnestのメインのバックバンドだったんだけど、ちょっと力が入りすぎだったかな。
Vinylのベースとドラムが一瞬抜けて、YossiとIanが合流したあたりが一番の山場だったです。
やっぱレゲエ、スカ、気持ちいいな~。
この前Marleyという、言わずと知れたBob Marleyの映画を見てきたばかりで。あれもいい映画だった(特にピンクのひげが素敵なLee Scratch Perryが出てきたあたりが最高だった)。暑くなってくると、こういうのが一番いいですね。

今年のフジロックに来ますね、Ernest。彼こそReal Dealです。見とかないと損するよー。 

6/1/2012 David Lindley @ Palms Playhouse

待ちに待ったDavid Lindley。Wintersという内陸の街。以前住んでいたDavisから近い所で。ベイエリアよりかなり暑い。多分10℃くらい暑い。 
8時くらいについたんだけど、あの暑さが耐え難いってのもDavisを出た一つの理由で。 

Palms Playhouseステージに向かって右側の2列目。 
ちょっとした紹介があって、かなりハデーな上下、面白い靴を履いたDavidが出てきた。開口一番「Here I am. I’m still alive.」とおどけた調子。これだけでオーディエンスは笑い、味方につけちゃう。 
5~6本の弦楽器が脇にある。 
ショーの進行はというと、曲と曲の間にちょこちょこと話。次やる曲についてだったり、単なる近況だったり、楽器の由来や説明。とにかく面白く話を仕立てて、楽器を弾きはじめる。つまりウォーミングアップ。本題の曲に入る前に必ず手慣らしをするんだけど、私は曲本題よりも、むしろその手慣らしの大ファン。この手慣らしがとにかく美しい。 
とくに今回はOudという楽器のウォーミングアップに持ってかれました。 

ソロのショーが好きです。 
バンドと違ってソロになると時間、空間を埋める音の彩がぐっと少なくなる。多人数のバンドであればさまざまな音色で十分にそれらを埋めていくことができものだが、1人となると同時にやれる事も限られてくる。 
Garrinのようにループでもって音を無理やり増やすこともできるが、上手であればよいとはいえ、Garrinには内緒だが、私はあれは反則だと思っている。 
Jorma程のマスターになるとギター1本、それと残響音、自分の声だけで、いろいろな画が見えてくる。 
David Lindleyの場合は耳を疑ってしまうほど正確なピッチ。正確なピッチといっても絶対音階の中でではなく、曲の中でのコンテクストしてだ。 
まず一人で演るわけだから、チューナーからみて正確なピッチは要らない。次に曲をいざ演奏し始めると、曲と楽器に合ったピッチというのがある。頼りになるのはチューナーではなく耳だ。聞いて「気持ちいい」とか「この曲ではこの雰囲気」というポイントが「正確なピッチ」ということになる。そのポイントは必ずしもチューナー的に見て正確である必要はなく、むしろ大体の場合がチューナーのピッチとは、ずれている。それにどれほど敏感になれるかということだ。 
ただフレット上に指を置いただけでは、そのポイントにたどり着くことができないので、必然的に弦をネック側に引いたり、ヘッド側に押したりして調節する。Kimockはそれをmicro pitchingと呼んだ。 
話がそれたが、David LindelyはLap Steel, それからどこの国から来た楽器だか知らないが、弦楽器たち。それらすべてにおいてマイクロピッチ済みの音が出ている。 
それが凄い。 
それぞれの曲がどんな世界に描かれるべきか、それをよく知った上、意図して音を出している。一聴しただけでは偶然のように聞こえるあの音もこの音も、実は意図的に作られている、ということをKimockも言っていた。 

Lindley のショーは録音もカメラでの撮影、録画も許されていない。余計なことをせず「音を聞いてほしい」というメッセージがここにもみられる。 
色々とコミカルな側面の影に、音楽への強いこだわりが見て取れる。改めて彼のショーを見ることができて光栄に思った。 

05/29/2012 Randy Craig's Trip @ Cafe Trieste



毎月最終週の火曜日、バークリーのカフェトリエステ。Randy Craig Trip。 
四角四面なジャズはほとんど聞きませんが、このカルテットは別口。 
Terry Haggertyが目当て。今回は結構空きがあって、容易にステージの前に座れた。 

なんて言う名前の技法か忘れましたが、上下上下と交互に弦を弾くオルタナティブピッキングではなく、上から下へ次から次へと別の弦を弾いていく、あ、思い出したスウィープピッキング…だったはず。あれが、異常に上手い。速弾きの秘密はこれ。 
右手は上から下へゆっくり動いているだけだけど、一回のストロークで最高12の音が出ているわけです。 


ギグの後またまたHaggerty夫妻とおしゃべり。奥さんのKatieもこのグループで歌ってて。いつも結構ゆっくりめのWichta linemanが、今回結構ぎくしゃくしてしまって「お、どうするかな」と思っていたところ、さすがプロ。キャリアでしょうね。上手いことミス(ぎくしゃく)をカヴァー。 
Katieが「あれは、多分もうちょっとスローにいくべきだったわ」というので、「いや、あれはあれでよかったよ。いつもの感じと違ってとてもよかった。ちょっとやばいなと思ったけど、でもそれはそれでスリルがあってよかったよ」って。言ったんですが、考えてみると結構ヤな客ですな。苦笑 
今後のスケジュールやら、カヴァーレッツが最高によかったことだとかお話しして。 
で、Terryはいつも通り、地上を5センチくらい浮いている感じで。本当にいい人で。いーっつも笑顔なんですね。 
「結構最近生活が苦しくってね」なんて所帯じみた相談をしても、「あーそうなんだまぁ僕も無一文みたいなもんでさ、ストラグルの連続だよ。ガハハハハ(←超大文字で)」ってな感じで。こういう話せるギグが一番いいですね。 
本当にポジティブなエナジーをいただきました。ありがとうございました。