2013年6月30日日曜日

06/26/2013 Stu Allen & Mars Hotel @ Ashkenaz

AshkenazはBerkeleyのGillman st. とSan Pabro st.の角にあるヴェニューで、ホームページによると1973年にDavid Nadelという人権活動家によってもともと倉庫だった建物をダンスホールとして改築しオープン。
Ashkenazという耳なじみのない会場の名前は、彼自身のルーツがAshkenazi Jewish (アシュケナジム:ユダヤ系のディアスポラのうちドイツ語圏や東欧諸国などに定住した人々、およびその子孫を指す; wiki)であることかららしい。

小さなドアを入ると机があって黒人のおっさんが無言で座っている。$12と手書きの札が出ているのでお金を渡すと表情ひとつ変えずに一言「右手」と言う。
右手を出すと手首の内側にポンとスタンプされる。
「ありがとう」とか笑顔とかはない。
見回してみるとむき出しの木造の天井、だだっ広いフロア、そしてステージ。ステージの脇に梁が天井まで通っていたりして、見た目重視ではないことは明らかで。
ステージ横から裏へ回るとそれほど綺麗でない個室トイレが無造作に3つか4つ並んでいる。本当に取ってつけたかのような適当なレイアウトだ。
男用と女用が別れていないので、セットブレイクの時はいつも長蛇の列。
その奥へ行くとバックステージで、ここが曇っていない日はない。

ここは全てが無骨。
ファンシーで皆笑顔で迎えてくれるTerrapin CrossroadsやSweetwaterとは大違いだ。

「お客様は神様」ではない。
客も人であれば、アーティストも人だし、バーテンダーも人だし、物販のねえちゃんも人。スタンプを押した黒人のおっちゃんも人。
サービスを提供する人の身分が低く、受ける側がお金を払ったから高い、というのは間違っている。

高校時代、名古屋は栄のダイヤモンドホールでSonic Youthを見た。
94年くらいだったと思う。Washing Machine Tour。
当時の高校生の自分にとってナウだったのはMellow Goldを出したばかりのBeck、チョコシンのボアダムズ。あとロックっぽいものでMelvinsのHoodini, Mudhoneyなんかを聞きまくっていた。
レッチリは今のような「ロックスター」ではなく、Faith No MoreとかFishboneとかと同様「変態ミクスチャーロック」のいちバンドに過ぎなかった。Dave Navalloがギターだった頃だ。

Sonic Youthに話を戻すと、彼らの機材が盗まれたせいで音が劇的にクリアーになる以前の話で、ショーはalternative/grunge余波はとっくにすぎていた時期とはいえノイズまみれで、モンドな(笑)ショーだった。
凄まじくノイジーなDiamond Seaでアンコールが終わり、客電がついた。
「あーびっくりした」というのが感想だった。笑
するとさらにびっくりする事が待ち受けていた。

客がぶーたれている。
「金返せー」と言っている人が、一人や二人ではなかった。
ステージに何か放り投げこんでるやつもいる。
何をしにここにきたのか、そして誰を見に来たのか知っているのか。
確かに解りやすいショーだったとは言えないけど、自分が楽しめなかった責任を全部Sonic Youthに転嫁する事ができるなんて、あきれた傲慢さだと思った。
あんた自身はそこでいい時間を過ごす努力をしたのか。お金を払うまでは頑張ったかもしれないが、いつもそれだけで十分なわけがない。
エンターテイメントの場は提供する側だけでなく、される側と両方でもっている。そこに力関係があるのはおかしい。
なので「お客様は神様」ではない。
「楽しめなきゃ、あんたが悪い。か、あんた、運が悪い。」

話をもとに戻すと、無骨なAshkenazだ。こういう会場があるのは嬉しい。
変に「おもてなし」がないのが嬉しい。
彼らに取って理不尽な事で客がぶーたれようものなら、金を放り出して誇らしげに「出てけ」と言うはずだ。笑

Stu AllenがMelvin Seals' JGBを離れたのが2011年だから、もう2年前。赤ちゃんができて長距離ツアーが難しくなったのが理由だったと思う。
その直後からこのStu Allen & Mars Hotelがローカルに活動をはじめた。
もともと月に2回くらいGrateful Dead Nightをやっていた。初めてこっちに遊びにきた9年前にGrapefruit Edを見たのもここ。
当時は色々なデッドカバーバンドが入れ替わりで出ていたと思う。

で、この2年間はMars Hotelが原則毎週水曜日のGrateful Dead Night担当になった。
はじめの頃は閑散として無骨まるだしなフロアだったが、最近はにぎわっている。
いい感じ。

無骨といえばこのバンドも無骨だ。
いいバンドとはいえ人気者になってかき回してやろうとか、大金持ちのロックスターになろうとか、そういう感じは100%ない。
やりたい音楽をやりたいように、世の中にこびることなく、やり続けてきた人たちであり、これからも彼らのその姿勢が崩れる事はないと思う。
CD屋の店頭に並ぶ事がない、ラジオでかかりにくい、とても人間臭い音楽に日常的に触れる事ができて幸せだと思う。
地道に好きな事を突き詰めようと、見えないところで頑張っている人たちに乾杯。
がんばれーAshkenaz!! がんばれーMars Hotel!!

2013年6月25日火曜日

6/22/2013 Everyone Orchestra @ Mystic Theater

skaのスタンダードにBall Of Fireという曲があるが、まさしく火の玉のようにホットなショーだった。
凄腕ミュージシャンの寄せ鍋企画ものの一つではあるけれど、こんな楽しいバンドはないと思う。
なによりコンダクターのMatt Butlerさん、こんなありそうでなかったバンドに指揮者というアイデア、とてもユニークで斬新だと思う。





自分もミュージシャンの端くれの端くれとして、バンドでプレーしているのでわかる。
それぞれ腕がいいバンドは、バンドがより民主的になってしまう、アイロニックなことに。できるミュージシャンは自分の腕を知っているので指示がない限りでしゃばらない。で、よりできるミュージシャンが結局「いやいや」仕切る事になるケースが多い。
が、実はそれが落とし穴になるケースもたびたびで、腕があるミュージシャンが必ずしも曲をよい方に持っていくコンダクターであるとは限らないとように思う。コンダクターというかエディター的な役。
楽器を操るテクニックと、曲を構築するテクニックはどうやら別のように思う。
曲をゆだねられる人がバンドの中に居るのは、ミュージシャンにとってはとても助かる。

これを利用したのが、このMatt Butlerという人。
指揮者といってもクラシック音楽のやり方ではなく、実にファンキーな格好で高い帽子をかぶってミュージシャン達に向かって立って100円ショップで売っているような小さいホワイトボードに転調、展開などの指示を出していく。ジェスチャーでも色々指示を出す。これは原理としてはクラシックの指揮者のやっていることと大して変わりはない。
たまにオーディエンスに向かって指示を出す時もあって、「Shake your butt」と歌えとか、音程を示しながら一緒にハミングしろとか、かと思うと普通に手拍子をしてほしがったりする時もある。

一曲演奏した後で、
Matt:「hook」って出したら、自然とふっとhookが出てきて前から決められてたみたいに曲の中におさまるんだから、最高だよなー。
Steve: そりゃ簡単だろう、あんたにとっちゃ。演奏しているこっちの身になってみなよ
二人:爆笑
Matt: じゃ次のネタはスティーブ、よろしくな。
Steve: ゲー、マジで 笑


こんなようなやりとりもあったりして。
ほとんどはアドリブだと思う。曲毎にミュージシャンからネタを出してもらって、それにみんなで肉付けをしていく。途中で「Rock」になったり「A minor」になったり「Return to Part A」になったり、「Hook」を出させたりしながら曲に起伏をつける。
みなオーディエンスも含めとてもリラックスしているのがわかる。
スティーブがネタとして出した「Congoman」は嬉しかった。今までのSteve, Bernie, Wally, Andyのバージョンと違う「Congoman」が聞けたのはボーナスだった。


今回のEveryone OrchestraのメンバーはMatt Butler:Conductor、Steve Kimock: Guitars, John Morgan Kimock :Drums, Gregg Anton: Drums, Sunshine Garcia Becker: Vocal, Mike Sugar: Bass, Trevor Garrod: Key, Eddie Roberts: Guitar。
今まで見たカオスになる事が多いE.O.のショーの中でもとりたててすっきりしていたと思う。ミュージシャン同士の相性がよかったのかもしれない。
ミュージシャンの数が少なかったのかなー。音数が普通のバンドを見ているみたいだった。
Eddie RobertsとKimockのいい感じのギターバトルが聞けたのはボーナスだった。
EddieはNew Master Soundsのファウンディングメンバーで、英国の人と聞いた。Cry babyとES、それにDeluxe Reverb?からきざまれるカッティングはかなりシャープだった。ワウ、むちゃくちゃうまいなーというのが第一印象。リズムがずれない。全然。剛なリズム感。
Kimockはいつも通り。今回はwhite start, gibson, charvil 12 strings, lap steel、の4本。Charvelの出番はほとんどなし。アンプはtwo rocksのキャビネットとtwin reverb。
Kimockのソロが燃えに燃えている時に、Mattがそれを遮って殺意を覚えた瞬間が1回あったが、それ以外はハッピーゴーラッキーで楽しい時間を過ごす事ができました。


客は全然入っていなかった。金曜日で$23でスッカスカ。でも、バンドは最初から最後まで燃え続けた。
ありとあらゆるダンスグルーブ(ネタ)を使って9時過ぎから1時間の休憩をはさんで、1時前まで。熱かった。


面白いなと思ったのは、今回のショーのレコーディングはショーが終わった直後すぐ、$15でアベイラブル。
CDRというフォーマットではなくて、mp3USBドライブ。それがリストバンドについている。
その日のショーがこんな形で持ち帰り可能ってのは斬新だと思う。


初めてThe Deadを見たのは2004年の夏だったが、お金を払えばそのショーの音源のCDRが後日自分の家に届くってい話に興奮したのは9年前。
etreeやarchives.orgで無料で聞きたいショーの音源がダウンロードできるっていう画期的なシステムにふるえたのもその頃。
で、今日。さっき聞いたばかりのショーの音源を、帰りの車の中で聞ける。すごい世の中になったもんです。 

2013年6月24日月曜日

6/7 - 6/8/2013 David Lindley w/ Joe Cravan




次はWintersのPalmsで会おうよ、と別れて以来、Daveがくれた練習の紙を見て毎日スライドギターの練習をしている。 
一日も欠勤なしで同じ事を練習している。17の時の初めてギターを手にした時のような感覚がまた戻ってきたかのようで幸せ。笑 

で、とうとうやってきたDavid Lindley w/ Joe Cravenのショー。 
6/7 Palms Play House @ Winters 
6/8 Twisted Oak Winery @ Murphys 

今このランを終えて、ウツ状態になっている自分に気がついた。 
言葉で言い表せないくらい素晴らしいショーの次の日は「今日はもうショーがないんだよな…」と、いつも落ち込む。 
思考回路がフローズしてしまって、次に進めなくなってしまっているのだ。 
だから「今Daveはどこで何をしているだろう」などとへんてこなことを考えたりもする。 

どちらのショーも早めに会場入りして、最前列で見る事ができた。 

今回のDaveの楽器は5つ。 
Weissenborn C tuning 
Weissenborn D tuning 
Bariton Weissenborn G tuning 
Bouzouki 
Oud 

David Lindley w/ Joe Craven 
6/7 Palms Play House @ Winters 

Ain't No Way Baby (Bouzouki) 
Old Coot from Tennessee (D Weissen) 
Vast Indifference of Heaven (C Weissen) 
Mutineer (D Weissen) 
Pretty Polly (Bouzouki) 
Little Sadie (Oud) 
Oud Tunes (7/8 Suite) * W/o Joe (Oud) 
Little Green Bottle (C Weissen) 
Revenge Will Come (G Weissen) 

Encore: 
Pretty Girl Rules the World (G Weissen) 


6/8 Twisted Oak Winery @ Murphys 
1st set/ Joe's Solo set 
2nd set David Lindley w/ Joe Craven 
Ain't No Way Baby 
Old Coot from Tennessee 
Vast Indifference of Heaven 
Mutineer 
Pretty Polly 
Little Sadie 
Revenge Will Come 

Encore 
Little Green Bottle 

ほとんどセットは同じ。土曜日の方がジョーのセットがあった事もあって、ちょっと短かった。 


一日目Palmsは小ぶりな席付きの会場。以前にもここでMr. Daveを見た。絵に描いたような田舎町の古いコンサート会場。 
多分200人から300人入ればフルハウスだろう。 
しっかし、どうしようもなく暑かった。Sacrament Valleyの夏はフライパンで煎られているいるような暑さ。 
この日もまだ6月のはじめだというのに、5時頃着いたときはまだ40℃近かった。 
数人列を作っていた。会場の前からサウンドチェックの音が漏れている。よこの階段から上がってみるとDaveとJoeがガハガハわらいながら音のチェックをしている。 

やっとのことで7時半。ドアが開いてデイブの真ん前に陣取った。最高の席だ。気が散る事なくかぶりついていられる。 
セットはほぼFPRのショーと同じだったと思う。 
 

ただ何でも屋のJoe Cravenが今回は一緒。実の事このWintersのショーにはJoeはアナウンスされていなかったのでちょっと驚きだった。 
しかも、オープニングではなく共演というのもダブル驚き。 
印象としては、 
「Mr. Daveとパーカッションは本当に相性がいい。」 


ソロショーでソロを弾いている時や前奏のアドリブ時の周りの空気が一瞬真空状態になるような緊張感。これは今回のショーはそれほどなかった。 
ただどのアスペクトから見ても根っからリズミカルな人なので、横に打楽器が入るとものすごくダンサブルになる。 
これが新鮮でとてもよかった。 

リズムに関しては、FPRでも右手の親指が忘れていても無意識にリズムを刻めるようになることの重要性を口酸っぱく強調していた。 
「正確なリズムをキープするにはドラムマシーンを使うんだ。そう『ブガチャガ、ブガチャガ。』スキャッフルするんだ。」とか、 
「ここは『ボイイェイ』って感じで。ゆっくりバーを3から5フレットに。」 
どうでもいいが、音の説明に擬音語が入るのがなんだかうれしい。解りやすい。 

Joe Cravenという人は、北カリフォルニアはDixon在住のジャンベからフィドルまでなんでもこなすマルチなミュージシャン。 
5、6年前ハイシエラで見た。実はそれ以上前にもここWintersはPalmsで彼のショーを見た事があったと思う。 
ベースはブルーグラスだと思うんだけど、とにかく器用な人でなんでも屋。 
キャラもネアカな人でひょうきんで明るい。ショーの後ちょっとおしゃべりした印象。 
微妙に性格の感じがMr. Daveと似ている。 

ショーが8時に始まって休憩なしでアンコールも含めて終わったのは10時半を回っていた。 
2時間で10曲というと、とてもボリュームが少ないようにみえるが、それがそうでもなかった。逆に10曲しかやってない事に驚いたくらい。 
Mr. Daveの曲間のおしゃべりが結構長い(楽しいから長く感じないけどね...)のと、あとJoeのソロ、2人組なのでその分ブレーキが効きにくいというのもあったと思うが、曲も多すぎず少なすぎず、長過ぎず短すぎずの、ショー自体がちょうどいいバランスだったと思う。 

トークはDolly Partonとの共演時の話、Green Bottleの創作秘話、Revenge Will Comeの弁護士だけどOK、とか何度も聞いたものもあれば、Joeが途中でトイレで抜けた時にステージ上で便意をもよおした時の対処法とか純粋にその場限りのアドリブもありで、いつもMr. Daveのショーは楽しい。 
そのヘラヘラでぬけぬけなトークをはさんで、生糸一本張りつめたような音で紡がれる曲が響く。 
この枝雀師匠もびっくりの緊張と緩和がたまらない。 
Mr. Daveの声は確かにひょうきんだけど、あの気が遠くなるような楽器の演奏テクニックにはバランスを考えてもあの声じゃないと。他じゃダメだと思う。 
 


一日目のショーとは対照的な環境だった二日目のショー。野外。ノーシート。 
ベイエリアからここに来るまで2時間半。Angels campという素敵な感じの名前の街をすぎて、カリフォルニア特有の黄金の原野をのぼったり下ったりしながら、さらに奥地へ。 
 

ワイナリーというから結構お金にモノを言わせた感じの立派な野外ステージでもあるのかとおもったら、びっくりした。 
普段は駐車場にでもつかっていそうな場所に、高校生でも2時間あれば作れそうなステージ。それに気の抜けたようなテントが頼りなくかぶさっている。 
照明も学芸会チックで、PAのスピーカーは左右にふたつづつ。 
客は駐車場のじゃりの上に自分で持ってきた席を広げて座っている。砂利、芝生とかじゃなくて、じゃり。とても堅い。 


でも周りを見回すととても素晴らしい景色が広がっている。 
緑のカーペットを敷き詰めたような緩やかな丘にぽつぽつとオークの木が植わっていて、それが360°のパノラマで迫ってくる。 
着いたときはとても暑かったが、日が沈むにつれて気持ちいい風がふきはじめた。そこに夕焼けのオレンジ色がいい感じでステージを照らす。 
暗くなっていくにつれて、そのアンバランスにみずぼらしかった駐車場体な野外会場と素晴らしい景色が混じり合って、その境界線がなくなっていった。 
しかも音が出はじめると、野外コンサート特有の音抜けのよさと音のでかさがとてもよく、会場うんぬんなんてどうでもよくなった。 

二日目のショーはJoeの1時間のソロステージから始まって、ちょっとした休憩をはさんで、JoeとMr. Daveのステージが2時間。 
結構ボリュームがあって、アンコールが終わった時にはくたくただった。 
DaveのセットはWintersのショーより2曲少なかったが、正解だったと思う。 
 

2013年6月23日日曜日

05/17 - 05/20/2013 David Lindley @ Fur Peace Ranch




 今回で3回目のFPR。 
Steve以外のミュージシャンから教えてもらうのは初めてで変に緊張していた。 

緊張したまま木曜日夜11:00、SFOから出発。 
オハイオ州コロンバスポート空港に着いたのは予定より一時間遅れで、9時過ぎだったはず。 
時差のせいで眠くなるかと思っていたら、そんなでもない。 
FPRに着いたのは、昼前。11:45。 
いそいでキャビンに荷物を置いて。 

さっそくいつも通りのジョンとヴァネッサからオリエンテーション。 
アルコールフリー、ドラッグフリー、ガンフリー施設ということ、そしてそれぞれの自己紹介。 
「ここに帰って来れてとてもしあわせです」 

その後確かランチタイムになったはず。 
ここのメシはうまい。 
シンプルだけど、しっかりしたあたたかい食事がでてくる。 
毎食前に赤毛でヒッピーなコックさんがダイニングルームの前に出てきて、ホラ貝みたいなのを三度吹く。 
「ぶをぉぉぉぉーぶをぉぉぉーぶをぉぉぉー」というのが食事の合図になっている。 
今回は個人的にチキンパイが最高だと思った。あとパンが美味かった。 



Mr. Daveのクラスは毎日やるべき練習についての説明が50%で、あとはジョークと思い出話だった。 
 

Steveの時のようなインテンスな感じはなく、彼の音楽がそうであるように笑いに満ちていた。 
ひょうきんモードになると急にジャマイカンアクセントになるMr. Daveはとてもかわいかった。 
"Ya Man, Jamaican Red Bull, Man!!" 

でも基本はあくまでプロフェッショナルなデーブ。 
クラスルームにいる全員がちゃんと彼の言っていることをきちんと理解しているか、チャンスを見つけては一人一人に「今んところどうだ?」みたいに聞いて回る事ができるような面ももっている。 
情報盛りだくさんなクラスが終わって一息ついて一人でお茶をのんでいると、デーブさん私のところにひょこっとやってきた。 

「どうだい?」 
「うん。今のところ最高です。ところで、ビブラートする時って左のバーを持っている手の薬指ってこんな感じでいい?」 
「中指と薬指がこれくらい急な角度でもいいよ、でもビブラートする時は薬指と小指は固定させてた方がいいだろうね。ほらバルタン星人みたいに… 
 バケモノーーー!!」 
とても細かく丁寧なのだ。真剣な話だけど必ず笑いがついてくる。 

感情と演奏を結びつけるにはということを聞いてみた。 
デーブはいくつか答えをくれたが、その一つに「人のために演奏してみな」っていうのがあった。 
「僕は昔ブルーススプリングスティーンの『Brothers Under the Bridge』をベトナム帰還兵の為にカバーして歌ってた。特定の人を思い浮かべてその人のために演奏すると、音に感情が乗るようになるよ。」 
その他にも娘さんの話、El Rayo Xの音作りの話、レコードレーベルとの曲の権利関係の話、河内音頭に感動した話、名古屋のヤクザシューズの話。 
一人日本人だということもあって、僕の前では来日時の話が多かった。プロモーターとの話も楽しそうにしていた。 
「また日本にも来てよ」というと、「もうそろそろ時期だよなー」とまじめな顔。 

Daveがいう「Sticky Notes」というのが、Kimockも彼のクラスの中で説明していたので、「そのNoteについて、Steveも言ってたよ。」と言うと、「あーSteve。やつは本当にクレイジーだよ。こういう事はなんでも知ってるんだ。」と。「そういえばバンパーステッカーをやつからもらったんだけどさ…」とジョークが続いた。 
Steveは前回のFPRで 
「昔David Lindleyのショーはいつも追っかけていて、彼の真ん前に陣取って、たまにラップスティールを演奏するDaveの手の真横まで行って、バーさばきを見てたよ。彼のプライバシーを完全に侵害してたよ。笑」と言っていた。 

ブルーススタイル、ラップスティールのワークショップなので、テンポのキープとフィンガーピッキング、ピッキングパターン、正確なピッチを身につける事、それと肝心要のスライドバーのヴィブラート。これらが4本柱で、これらの具体的な練習方法を書いた紙(もちろんMr. Daveお手製です)が配られ、それをMr. Daveが具体的に注意するべきところを指摘しながら、実演して、その後みんなで練習という感じで進んでいった。 

「みんなが払ったお金だけのものをちゃんと身につけているかちゃんと確かめたいから」と一人一人にちゃんと「どう?分からないところはない?タブは読める?」とか。いやーものすごく繊細なひとなんだなぁと思った。こんな事まで心配するロックミュージシャンには会った事がない。 

ソールドアウトだった土曜日のショー。演奏する曲はいつもとそれほど変わらないのだけど、とにかくエンターテーナー。 
のそっとステージに現れ。「ハロー」と面白い表情を作る。これだけで、オーディエンスを手のひらの上に乗っけちゃう。 

『Big Twang』で何度も聞いたRevenge Will Comeを生で聞けたのが嬉しかった。 
「この曲を書いたのはGreg Copelandは弁護士だけど、彼はオーケーなやつだよ。(He's OK.)。 
そういえば、昔Clarence Whiteが他のミュージシャンに僕のことを紹介する時、彼はDavidで、クリスチャンじゃないけど、彼はオーケーなやつだよ。(He's OK.)。って紹介したんだよな。」 

あと、「陰鬱なテーマだし、数年前に演奏するのを止めたんだけど、久しぶりにやってみるよ。」というMCをはさんで先のスプリングスティーンのBrothers Under the Bridgeをやってくれたのは、あまりの感動で言葉を失った。こういう風に音に感情を入れるんだよ、と目の前でパブリックに答えをくれたデイブには大感謝。 

月曜、出発の朝。Hot Tuna w/ Steve Kimockとのショーをコロラドで終えたばかりのJormaがFPRに来てくれて(2時間しか寝てないと言っていた。)、キッチンの外でミニアコースティックショーをするというので、真ん前で見せてもらった。 
贅沢な話だよなー。 
 


ショーの後こんなあり得ないツーショットもあったりして。 
 

笑いとポジティブにあふれた4日間。ごちそうさまでした。 


めでたしめでたし。