Oh my fuckin’ God これが彼が一曲目の演奏を終えた時に私の口から出た言葉。 すーーーごーーーすーーーぎーーーーーー 最初の曲の最初のノートが聞こえた瞬間に参りました。 リスナー、あるいは音楽ファンとして、今自分が求めている音楽と彼が演奏しているものがぴったりと合った、そういう意味でとてもラッキーでした。 また、ギターを演奏する自分としても、今自分が向かおうとしているベクトルに確信を持てたショーでした。 はっきりいって彼が演奏している曲が、なんなのかは全然わからなかった。ジャンル不明。ただ彼が鳴らす音、いち音いち音が気味が悪いほど行き届いている。つまりマイクロチューン済。 しかも演奏している楽器が、とりあえず弦楽器、というだけでギターでもないので、それがさらに曲を「謎」にたたきこんでいて。もちろんその弦楽器類には変なチューニングが施されていて。 もう訳が分かんないけど、ただただすごい!!という。短絡的だけどそうとしか言いようのないのが率直な感想。 こんな謎ジェットコースターのような、得体の知れないスリルを味わったのは本当に初めてで。 正直、今まですごいと思ってきたものすべてがぼやけてしまうかのような、強烈なショーでした。 それぞれ詳しく勉強したわけではないので極めて不正確で、音から受けるイメージをもとに言っているにすぎないけど、インド的なスケール、中東からアラビックなスケール、ケルティックなスケール、そういったものがバランスよく彼の中で消化されて、それぞれがとても適切なピッチで、描かれていた。 もう一つ付け加えなければならないのが、これまた正確に刻まれるリズム。 安定したリズムで、正確にピッチされた音を出す。あとはすべていろどりでいいのだ。 リズムとピッチが合っていれば、あとはどうとでも聞かせられる。ジャンルも何もないのだ。 2月終わりにSweetwaterであったKimockのギターマスタークラスでのこと。 Steveが正しい音と間違った音についてラップトップギター上で説明している時、参加者が近づいてこない。緊張だろう。 その時Steveが言った事が面白かった。 「僕はDavid Lindleyのショーを見る時はいつも彼のパーソナルスペースをおかしていたよ。彼の手元を至近距離で覗き込んでたからね。」 なるほど…よーくわかりました、Steve。 その理由が。そりゃそうだ。こんなのを見せつけられりゃぁね。 どうなってるんだ、てことになりますわね。
数年ぶりのEric McFadden Trio。 前回はAshkenazでSatisfied Allstarsの前座だった。 両者のあまりの雰囲気の違い(EMT=暗くシリアスでしかも熱なロック、SA=粋なジャズファンク)に「なんともな~」としか思えなかったのだけど。 今回は妻の妹がEric McFaddenのファンであるということが発覚し、彼女を招待して見に行ったと。 レストランディナー+予約席でしめてひとり$50。高っけぇー。 さてこのEric(45歳:11歳の時にギターを初めて手に取る)、もともとはAngry Babiesというパンクバンドからミュージックキャリアがはじまり、フラメンコギターなんかも吸収しつつ、George Clintonとステージに立ちファンクも吸い込む。 その他一緒にプレイした人、 Chip Roland, Keb Mo', Les Claypool, Joe Strummer, Keb Mo, Bernie Worrell, Jackson Browne。完全にぐちゃぐちゃ。強いてあげるとすればパンクとファンクだけど、基本はジャンル関係なしの雑食系。 こういう人がジャムると一番強いですよね。引き出しが多ければ多いほど。 そしてStockholm Syndrome。 Jerry Joseph, Dave Schools (Widespread Panic), Wally Ingram。んー。わからん。 蛇足ですが案外Kimockとプレーしているミュージシャン、かぶってますよね。 不思議です。 でもプレイスタイルは真逆。 Kimockの静に対してEricは動。 Eric McFadden Trio はVocal, GuitarのEric、DrumのPaulo Baldi (Cake, Les Claypool's Fancy Band)とBassのJames Whiton (Tom Waits)。それにかなり上手なフィドルの若い子(名前は失念…)が数曲参加してました。 どうであれ、上手いですね。 曲調は暗くダイナミックでパンキッシュな感じなのが多い、でもソロが全然パンクじゃない。むっちゃ弾けてる。ギターは Godinの5th Avenue 。もしくはGibson SG。 これらのギターにTwin Reverbで、いい感じのひずみの音が出てました。 二段階に分けてひずみペダルをかませていたように思うんですが、一つはソロ用のブースターとしてってのはわかるけど、もう一つはどのメーカーのペダルだったのか。 個人的なメモになってしまいますが、Twinの歪み作りは結構難しく、変なペダルをかませるとヘンテコで嫌な音になってしまうので気になるところでした。 どうであれ。 ナイロンアコースティック弦のアコギをツインリバーブにつなげてフラメンコ的な曲もやるんですが、これもどうであれ弾けてる。 全体を通してかなり気合の入ったショーでして、最前列で見ていたモノとしては、若干疲れました。長めの1セットにアンコール、で2時間から2時間半。 動きがあり、しゃべりもできる人なので、曲はほとんど知りませんでしたが全然退屈しませんでした。 なにしろ一つ一つのジャンルにとても長けているのが凄すぎます。 ただこの一つ一つの点が一本のなめらかな線になると、もっとおっそろしいことになるでしょう。 この吸収してしまった(彼の場合は図らずもでしょうが…)色々なジャンルを一人の人間が一つの世界を持った曲として束ねるというのは、大変な苦労でしょう。 そうしてできた曲たちがショー、そしてショーがアーティストをつくっていくわけで…。 そこの途上にあるアーティストのように思います。それを見ているのがこっちとしちゃ、一番面白い。 とにかくその雑食性が凄い。これを武器にできるか、それがアダになるか、今後が楽しみです。 ちなみにショーの後ちょっと彼とお話しできるチャンスがあったのですが、とてもいい感じな人でした。アラスカかどっかにいくんだとか。J Mascisのオープニングをするんだとか。
いづみさん、情報ありがとう。 何と!フジロックです。 http://www.fujirockfestival.com/news/?id=1297 んー今年のフジロックはメンツ、ヤバすぎ。 Kimockの他にも、Earnest Ranglin(キモックも演るnana's chalk pipe, 54-46は彼のナンバーです。Below the basslineはいいよ~。)、Specialsとか。 気合を感じますね~。 日本行き、真剣に考えます。
2011年3月10日の夜は全く眠れなかった。 飼い猫の2匹が夜中じゅうベッドの上で騒ぎ通しだったからだ。疲れた脳みそを頭の上に乗っけての通勤。ミッションにあるオフィスに着く。まるであの日は先に進みたがらないチワワかなんかを無理やりリーシュにつなげて引きずり引きずり、ようやく到着といった感じだった。 とにかく疲れている中、遠くから聞こえてきたのが日本で起こった地震の情報だった。 どうやら大変な被害が出ているということ。 職場の仲間たちも顔を見合わせれば「TV見た?!」ばかりだった。 Kimockコンサートでいつも顔を合わすSimonがFacebookにアップしたyoutube動画を見て唖然として言葉を失った。 3G映画の中にいるかのような、あまりに現実離れしすぎたあのフテージたち。 道の先に見えていた水が10秒もしないうちに家や商店やらを根こそぎにし、家がぐちゃっとなる度にあちこちで土埃がたっている、水ばかりなのに煙たそうだった。車はおもちゃのようにぷかぷか水の上に浮き、一生に一度ぐらいしか出さないんじゃないかのような人の悲鳴、「早く走れ」の怒鳴り声。 TVに見えるものは海から流れ込んだ水とどこから来たのかわからない瓦礫。その中には、小さすぎるのか不思議と人は見えない。水と瓦礫だけだった。 とんでもない情報量にやられた。 そう、あれは金曜日だった。KimockのコンサートがSFからゴールデンゲートブリッジを渡って北、Sebastopolである日だった。 地震と津波のあとは、相当楽しみにしていたこのコンサートもかなり色褪せ、頭はニュートラルギアでフルに空回っているような状況だった。 しかし少なくともボーっとしているより何かをしている方が、と思って100%以上の疲労をまた引きずり引きずりして車で一時間。会場に着いたら、もうコンサートは始まっていて、Kimock Headの友達、マイキーが親切にも「地震のこと聞いたよ。お気の毒だったな」とハグをくれた。 着いてすぐ、あのKimock.comにもアップされているLove for Japan jamが始まった。ベースの人が日本人はいる?というので、手を挙げた覚えがある。
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楽しむには程遠いショーだった、とんでもないニュースに疲労が重なっていれば仕方がない。 時が経つごとにとんでもない情報がこちらにも続々届いてきて、どんどん被害の重みが増していった。原発のニュースがきた時は、「SFには今日何時から何時までは放射能が海を渡ってくるらしい」という予報まで出ていた。 仕事もあるしこっちも生活がかかっているので、日本に今帰るわけにはいかない、何かできることはないか、と思っていた。次の日のショーに機会があればキモックと話をしてみたい。もしかしたら日本のキモックファンたちデッドヘッズファンたち、さらには音楽好きの人たちを励ましてくれるかもしれない。メッセージでも音楽でも何でもいいから発信してはくれないかと。 しかし次の日、彼と話すチャンスは残念ながらおとずれなかった。コンサートってのは、見る側も演奏する側も、とにかくバタバタしているものだ。 次の週、んじゃ直訴メールはどうかと思った。パーソナルメアドはFur Peace Ranchの時にもらっていた。で、モノは試しとお願いしてみて、たしか1週間か2週間待っただろう頃、Relixマガジンのブログにコレがアップされた。
http://www.relix.com/media/video/steve-kimock-untitled-for-japan
早速お礼のメールを出したところ、このNYでの取材の日があまりに急で、朝早く一杯のコーヒーも飲めずに仕事しなければならなかったことに続いて、 It seemed like a good opportunity to express my gratitude, concern and compassion to the Japanese fans. Better with music than words. 「言葉よりも音楽の方がいいでしょ。」 あ、ちなみにスティーブがこのビデオの冒頭で言っていることはこんなことです。 「…さて次。タイトルがなくて悪いんだけど、何を演奏しようか考えてて。最近僕の感情にうったえかけるもの、それは何かっていうと日本で起きたこと。ただただ信じられないくらいに悲惨な自然災害。僕自身何回か日本に行ったことがあるよ。で、ものすごく感心したんだ、ぶっ飛んだね、日本という国に、文化に。それはとてもタイトにまとまっているんだ。 アメリカのメディアは好きなようにこの災害をとらえて報道してるけど、もしあんたが日本に行ったことがあるんだったら解るよね、全然公平に報道されていないんだ。そこには驚く程強くて、知性があってすごく進んでいる人たちがいるんだよ。そこで立ち向かっているんだよ。驚く程大きい、文字通り地球がひっくり返る程の災害に勇敢にもね。僕は確信しているんだ、彼らがこの災害を克服することを。 だから僕はそのことを思って、ちょっとした僕の感情の流れを演ろうと思う。それが何であれ…美しく立ち直ることのできる日本の人たちへ…」 おわりに: バタバタとしているうちに1年がたって、自分の中で地震と津波の記憶が色褪せてしまったかというとそうではなく、時間がたつごとに被害の大きさがクリアになって、今後の事なんかも考える余裕が出てきて、きわめて間接的にではあるけれども色濃く自分に影響を落としてきているような気がする。 いつ終わりが来るかもしれないということが色々な行動を起こす際に前提としてあって、そのうえで、じゃあできるうちに縁あって出会った人達に親切にしようとか、なるべく今を楽しく過ごそうとか、今集中して正しい判断をしようとか、時間の定規が「今」にぐっと近づいてきた。「10年後こうあるためにこういうプランを」から「今こうしておくことがいいのだ。今が将来になっていくのだから」という方向に変わった。 結構自信を持ってこれはいい変化だと思っているのだけど。そーんなことは実際はわからないやね。 こんなとこまで読んでくださった方、ありがとうございました。 実際に災害に遭われた方々へ謹んでお見舞い申し上げるとともに、残念にも命を落とされた方々へは心よりお悔み申し上げます。 今日一日、去年のこの日の事を想って祈ろうと思います。