2013年12月17日火曜日

12/14, 15/2013 Steve Kimock & Friends feat. Bobby Vega, Bill Vitt, Jeff Chimenti & Dan Lobowits @ Sweetwater Music Hall, Mill Valley, CA

                                                      Red White and Blue (Day 3)



3日間のランが一気に売り切れ、15日の日曜日が追加されこれまた一気にソールドアウトという。
近年まれに見る大人気だったこの4日間のキモックラン。
確かにこのメンツでJerry Garciaのレパートリを演るのであれば、このベイエリアでチケットが売り切れるのは当たり前っちゃ当たり前なんだけど…


それにしても一昨年からのSteve, Bernie, Andy, Wallyという鉄壁のツアーフォーメーションで、思った以上に会場で隙間が目立ってたのを思い返すと皮肉なものです。
キモックのサイドプロジェクトはあくまでサイドという趣が強く、この前のソウルグラスもそう。
やっぱツアーでがっつりしのぎをけずったメンバーと、あうんの呼吸にモノを言わせてあぶらがのりに乗った演奏を聴かしてもらう方が個人的には好み。
ツアーメンバーとしか出せないグルーブって確実にあるじゃないっすか。
まぁ、スティーブにしてみれば、Chimentiとのからみは、来年のRatdogとのツアーの予行練習的なものもあるんだろうけど。

        「たまにはね、ジェリーにリスペクトするときがあってもいいんじゃないかと思って」(Day 3 Opening)
                                     
そんなこんなで、正直今回はお金もなかったし興味もそれ程なかったし、って放っておいたらあっという間にソールドアウトになってしまって、焦っていた次第。
友人のスティーブがエクストラを持っているってことで、二日間一銭も払わず(苦笑)、なんとかありつけました。

それにしても。

このショーがここまでホットになるとは思っていなかった。


Bill Vittを見るのは今年のヴァレンタインデーのTony SaundersのKeystone Revisited以来。
あの時はそんなに気にもならなかったのだけど、とーてもソフトにドラムを叩く人。
もしかしてバンドで使い分けているのかもしれないけど、ラウドなKimock, Vegaの間に入るととてもソフトなのだ。
最初は正直「だ、大丈夫か?」と思ったのだけれど、それが面白い風にバンドケミストリーに作用しているのに気がついた。

ソロ/ジャムのパターンに2通りあって、
ひとつはいつも通り、KimockもしくはChimentiがガンガンに弾きまくると言うパターン。
                                     usual suspects!!

二つ目は、これがとてもいい感じだったのだけれど、最初は「あれ、だれかがソロを弾きあぐねているのかな」と思ったのだが、実は違った。
ジャムっていた。
お互いがちょっとづつフィルインを入れつつ、相互作用じゃないけど、インスパイアしながら行き先を探っていく感じ。
で、そのグルーブが、Vittさんがバシバシ強く煽らないおかげで、とーてもリラックスしていて凄まじく気持ちがいい。
ジョンモーローやグレッグアントンだったらジャムに食い込んでくるだろうところを、彼はものすごく客観的にジャムを見て、結果としてその他のメンバーを立たせている。
意識してやっているかどうかはわからないけど、恐れ入りました。
彼のスタイルとしてはジャズドラムがベースなんだろうけど、あのグルーブ感は今までになかった。
「我」を主張しない、とてもオーガニックなグルーブ。「和」を感じた。



SK&F 12/14/13
Sweetwater Music Hall
Mill Valley, CA

Set 1
Mystery Train
Anorexia
Positively 4th Street
I Was Made to Love You
How Sweet it Is
Stella Blue

Set 2
Deal (instrumental)
Scarlet Begonias
Mississippi Moon
Hillbillies
Encore
Who's Lovin' You Tonight


開演前からここまで尋常ならぬオーディエンスのエナジーを感じたのは久しぶり。
みんな興奮しすぎて「こわー」ってやつです。
それそのはず、ふたを開けてみればAnorexia, Hillbillies以外はJerry related。
Dylan, Stevie Wonderというののカバーもあるけど、ジェリーがカバーしたもののカバー。
4th streetはアップテンポでJerryのリズムのとり方とはちょっと違ったけど、それはそれでポップな感じでよかった。
このセットリストすごくバランスとれてていい。

はっきりいって、ぜんぶよかった。

しかしその中でもMississippi Moonには完全に参った。
あの、スローで難しい曲が完全に正しい形で再現されたのは感動ものだった。
あとStella。笑えたのは、ステラがはじまった瞬間からどこからともなくオーディエンスが「シーーーーっ」って言いはじめて。
おしゃべり連中や酔っぱらい連中をだまらせた事。
で、みんなちゃんとシーンとするところが、えらい 笑

はじめから終わりまで、全く文句なし。
完璧。


SK&F 12/15/13
Sweetwater Music Hall
Mill Valley, CA

Set 1
After Midnight**
Norwegian Wood (instrumental)
Boogie On Reggae Woman**
Come Together (instrumental)
They Love Each Other**
Gomorrah (instrumental)

Set 2
Tangled Hangers (instrumental)
Takes a lot to laugh Takes a train to cry
Franklin's Tower**+ >
Walk on the Wild Side tease**+ >
Franklin's Tower**+
Born Under a Bad Sign**+
Going Down The Road Feeling Bad**
We Bid You Good Night*

E: The Harder They Come**

** Lebo & Sunshine vocals
+ Al Schneir guitar
* Sunshine vocals

セカンドナイト。
ファーストセットはこれまた昨晩から引き続いて超ホット。
あのNorwegian Woodの流れるような美しさは何だったんだろう。
あっけにとられて見てました。
そのあとのBoogie on the reggae woman!!
もうこの時点で完全にノックアウト。
これまた気味が悪い程の盛り上がりを見せたファーストセット。
ずっとあのJerryのギターWolfを弾いてたKimock。
目の前にいっぱい自分のギターがスタンバイしているにも関わらず、手放しませんでした。
お守りかなんかを握りしめてる子供みたいに。

セカンドセットはスティーブ、正直疲れてた。後から聞いたところによると、風邪ひいて超体調不良だったらしい。
客はそんなことかまわず、ガンガンギンギンに乗ってたけど。
ヴォーカルの入りとか、どうフィニッシュに持っていくか、ソロを誰がとるか、どのくらいとって誰に回すかとか。
やっぱりサイドプロジェクトって難しいのは、そこらへん。
臨機応変にやらないとあからさまに、ぼろがでちゃう。
スティーブは乗っているとメンバーに指示を上手に出せるんですが、疲れてくると明らかにそれができなくなってしまうんですよね。
一歩踏み出してしまった後で、「あれ、こうなるんじゃなかったの?」みたいになる。それがセカンドセットだった。
かといってボロボロになるわけもなく。
押さえるところは押さえた感じで。

             Leboがよーく頑張ってた。
            Sunshineも。いー顔してます。いー声だし。
つなぎなんかでヤバっておもうと、すっとそれをすくってくれたのがこの二人でした。プロフェッショナル。

あとMoe.の人もゲスト参加したけど、これはあくまでおまけだったでしょう。
             Moe. guy

Bobby Vegaのこと、何も言ってませんが。
このひと、問答無用にいつも絶好調なのはナゼ?
あー今日疲れてるなとか、機嫌悪いわーとかそういうのが全然なし。
煽るわ煽るわ、キモックが疲れててもへっちゃらで「もっとこい、もっとこい」。
こんなにハズレがないベーシストはみたことないです。オーディエンスの扱いもいいし、しかも雰囲気に全然のまれてない。
もう既に伝説のベーシスト。



そしてこのランは今後永く語り継がれるランになると思う。
ホントあの二日間はいったい何だったんだろう。いまだにぼーっとしてしまうくらいのエナジーでした。

                                     「毎度どうもー」

2013年12月12日木曜日

12/11/2013 Lee Ranaldo and The Dust @ Chapel, San Francisco, CA


会場に入った瞬間に耳をつんざくような轟音に打ちのめされた。
そうだった。この感覚は久しぶりだ。
パンク以降のアーティストの手ごたえならぬ、耳ごたえ。

「?」の感覚。
気持ちいいのか、よくないのかわからない。
アートとして優れているのか、よくないのかわからない。

この感覚に悩まされていた、10年くらい前。Grateful Deadにはまる前だ。
Nirvanaをリアルタイムで味わえたのはラッキーだった。
でもそれ以降の「パンク」は個人的には全然くえなかった。
確かに新しかったかもしれないが、かっこいいとも思えなかったし、かといって踊れるかというと踊れもしない。
Greendayにはまっている仲間とは自然と疎遠になっていったし、同じように、新しい「パンク」やら「ロック」の波に乗れなかった友達は音楽から離れていった。
今となっては笑えるが、若かったがうえにマジだった。
あえて口にはださなかったが、「お前ダサい音楽聞いている=イケてない。だからつるまない」

そんないやな自分が、Dick’s Picks11の一曲目のMorning Dewのただならぬ雰囲気に勝手にやられて、ひとりでジャムバンドをかじるようになった。
友達もそんなにいなかったし、名古屋でひとりデッドを聞きながら寝転がって「あーサンフランシスコってこんな音の街なのか、どんなんだろうな」と想いを馳せていた。
試しにタイダイを着てみた。が、あまりに自分にも合わないし、周りにも合わないのでやめた。笑

話がそれたが、デッドの音楽が教えてくれたのは、「考えるな」と言うことだ。
たるい曲であれ、インテンスな曲であれ全てあるがまま受け入れる事。
信じていれば、自然とあるべき場所にたどり着く。
大切なのはいるべき時にいるべき場所にいる事だ。

「?」の感覚は?のままでいいし、わからなければ素直に「わからない」でいいのだ。
そこに理解する努力はまったく要らない。
楽しめれば勝ちで、楽しめなければあんたが悪い。


ところでこの日「?」な音を出していたのは主役のLeeではない。
Bill Orcutt and Jacob Felixという前座のフリージャズデュオ。



Billがギター。テレキャスにビンテージTwin Reverbというとてもシンプルなセッティングで、気味が悪いくらいbrushyな音が出ていた。
ドラマーがこれまたすごかった。このドラミングは一瞬で「いい」と思った。
ギターはいいか悪いかはフリージャズのファンじゃないので全然わからないが、Fが好きなギタリストだなーと思った。
6弦の解放弦のおとがFにチューニングされていて、なにかとその音から入る。
とっかかりはいつもF。
それが、がりがりがりと高音域に上がっていく。0.5秒くらいの間に。
指がちゃんと動いていて音が一音一音ちゃんと出ているので、えらいなーと思った。

何を考えてこういう音楽をやっているのか、何が彼らをそうさせたのが、全然わからないし音楽から聞こえてこない。
こういうクールなのもいいなと思った。
聞く者の詮索を拒絶する音楽。
音以外何もない音楽。
たまにはいいなー。


Lee。

Leeを見たのは何年ぶりか。
Sonic Youthを見たのがいつが最後だったか、全然覚えてない。
こういうのをやりたい人だったのか。
はじめて知った。
ポップ。必ず曲の中にサビがある。展開もあるし、ソロもあるし。

バイオリンのボーをつかったり、

鈴みたいなのをならしたり、



小技もある。
が、基本的に曲のストラクチャーがものすごくわかりやすいし、親しみやすい。
なにか全く受け入れがたい事をやってくれる事をうっすらと期待していったのだが、見事に裏切られた。
具体的にいうと「Lee is Free」みたいな曲を延々1時間半ぶっ続けでやるんだろーなーと思ってた。
おそらくLee and the Dustというのは彼のポップロックプロジェクトなんだろう。

何よりもすげーなーと思ったのはドラマーのSteve Shelly。



テンポが全然ずれない。
すんばらしーなー。存分楽しませてもらいました。


素朴なポイントアウト。
ソニックユースのギターはステッカーが凄まじい。綺麗に見た目重視ではってあるかというと全然そうではなさそう。
サーストンもそんな癖があったように思うが、「次の曲は〜」って曲紹介をかならず入れるのが面白い。大体じゃらんじゃらんギターをならしながらだったりするし、聞こえないじゃん。正直曲のタイトルなんて、気にもならん 笑
エフェクトペダルにセッティングが具体的にステッカーではってある。「トレブルはここ、レベルはここ」みたいな感じで。つまみ、曲の途中でいじったりしたくならないのかなーとか。

2013年12月6日金曜日

12/05/2013 Kaki King @ Cafe du Nord, San Francisco, CA

おきのさんが数年前に「かとうくん、カキキング見た方がいいよ」と言っていた。
昔「David Lindleyのオープニングで見た」と妻が言っていた。
この二点から、すげえ人に違いないと思ってた。

ぶっ飛ばされる準備はできていた。むしろできるだけ遠くまでぶっ飛ばしてほしかった。
終わってみて、予想以上にぶっ飛ばされてしまった自分がいてびっくりした。
驚きのぶっ飛ばされ様だった。

カーキキング。

             タッピングとボディーを叩いて音を出すカーキさん。


基本的にギターのみのインストがメイン。
12弦ミニギター、7弦ギター、ミュータント琴ギター、普通の6弦オベーションギター、この4本をとっかえひっかえ。

           これはラップスティールではなくミュータント琴ギター。 

起こすとこんな感じ。
         色々なコントロールが付いていて、オクターブ上の音やら3度、5度の音やら出ます。

ギグの間中、脇に常にギターテクの女の人がいて、彼女が一曲ごとにチューニングを変えていたようだ。
この日はサンフランシスコ、異常に寒く、彼女の座っている後ろにはオイルヒーターが置かれていた。
一瞬でも手をかざす瞬間があるかと、じっと見ていたが(いやらしーなー)一回もそんなそぶりもなく、手は常にあったまっていたようだ。
手が冷えるといくらいいギタリストでも、指がもつれる。
あれだけ動いていれば手が冷える瞬間もなかったかもしれない、そう思えるくらいに別の生物のように指が動いていた。
彼女の場合ネックを上からも握ったりするし、ボディーを手で叩いてドラム音を出したりもするので、余計に積み上げた訓練と経験が目に見えるかのようだった。

それと数曲足のしたに置いてある箱を踏みならし、バスドラのような音を出していた。
片方でバスドラをやって、もう片方で鈴を鳴らしたりもした。

一曲弾いては、ちょっとおしゃべりをして場の雰囲気が和んだと思ったら、アップテンポで複雑なコード展開の曲を平気でこなす。
でまたちょっとしゃべって、次はシンプルだけど、やはり訳の分からないコードの曲をやる。
たまにギターを弾きながら変な顔をする。
「緊張と緩和」というセオリーがあるが、まさにそれだった。