2012年11月4日日曜日

11/02/2012 David Grisman Sextet special guest David Lindley @ UCLA Royce Hall

先々週に引き続いて、また赤ん坊になってしまった。 

はじめてこのショーの事を知った時、嘘かと思って狂喜乱舞。飛び上がった。
この二人が一緒にプレーするのか、ありうるのか、成立するのか。
マスターであり、自分のヒーロー二人が共演。でもLindleyがアメリカーナをベースに国籍不明なフージョン弦楽器音楽。Grismanがブルーグラスベース+ジプシースウィング=Dawgという。ちょっと音楽性が違いすぎないか?と思っていたら…
なるほど共演というんじゃなくてオープニングアクトがLindley Soloということだった。
どうであれ、ダブルメインアクトといってもいいこのショー。

後先考えず、とりあえずことチケットを買ってしまった。最前列で$60。安いもんだ。


さてオープニングのDavid Lindley。
最新アルバム”Big Twang”から、Warren Zevonのカヴァー。”Beneath The Vast Indifference Of Heaven。” アルバムではアコギ一本で泣かせる感じだったし、最近見たショーでもこの泣きバージョンでやっていて、すさまじい緊張感あふれる演奏で絶句した覚えがあるが、今回はちがった。ラップスティールで演奏ということもあって、メジャーキーが基本の根アカバージョン。これはこれでかなり完成度が高く、うなってしまった。その日の気分でヴァージョンを変えるのかなー。どうであれ、お気に入りの一曲が聞けて大満足。
あと、最近のショーでは必ずやる”Little Green Bottle”。デキセドリン中毒、実況中継バージョン。”Twango Bango II”に入っているのは、あっさりとした3分バージョンだが、これがライブになると、デキセドリントリップの実況が聴ける。場内を爆笑の渦にたたきこむこの曲。コミックソングともきけるけど、途中聴かせどころはじっくりバッチリ締める。
The State of Arkansasをはさんで、これまた目が回りそうなくらいにぶっ飛んだ7/8 Suite。
これこそLindleyの真骨頂ともいえる演奏だった。例によって、あれはなんだろう、中近東の弦楽器だろうか。もしかしたらOudかもしれない。でもボディーが平ったかったからOudではないか…Lindleyのウェブページにものっていないので、わからない。
そのエキゾチックな楽器を手にして、ポロンポロン前奏のような手慣らしをはじめた時点で空気感が一瞬で変わった。どこか行ったことがない場所のような、香辛料のスパイシーな香りがながれ、砂の上に座っているような感じになった。駱駝や象が夕焼けの中を歩いて行くようなこの曲。Traditionalのようだが、こんなの聴いたことない。
ベテランの凄腕ミュージシャンはいつもそうなのだが、いい演奏をする以上に会場の空気を変える能力にとても長けていると思う。抽象的なものの言い方でうまく伝わるか不安だが、実際にはステージで静かに演奏しているだけなのだが、曲が変わった瞬間にパカっと背景が変わったかのようになる。
特にLindley氏の場合、ジャム系のミュージシャンでない。なので一曲一曲完結した世界が、緊張感をもって描かれる。また一人でのステージなのでちょっとしたミスが大きく響いてしまう。
しかし、こんな不安はみじんも感じさせない、リラックスした余裕のステージだった。 Jorma同様、音が自然にLindley氏についてきている感じ。特別に力入れるのでなく、普通に音を出せば素晴らしい音が出てくるという。いつも通りあまりの音の緻密さにやられました。

さて20-30分の休憩をはさんで、David Grisman Sextet。実はLindleyより一歳年下のGrisman。昨年末のBluegrass Experience以来。Bluegrassは実は自分にとって結構とっつきにくいジャンル。恐らくハマるとそれ以外は聞かなくなるほどになってしまいそうだが、今のところまだそこまで行っていない。どうであれ、前回のGrisman experienceは、興味深かったが、観終わった後、若干疲れていたのを覚えている。

が、今回はそうではなかった。本腰を入れたBluegrassではなく、Dawgだったからかもしれない。
これも、2012年の今聴くと恐ろしくスタンダードっぽく聞こえるんだけど、実は彼が60年代だか70年代だかに「Bluegrassの楽器」マンドリンを持って、ジャズやらジプシースウィングやらとBluegrassをミックスしたフュージョン音楽をやっていたGrismanはかなりの異端児だったのは容易に想像がつく。

彼がコンサート中に言っていた事。Bill Monroeが彼の最初のヒーローで彼の曲をコピーしまくった。ソロも含めて完ぺきになるまで練習したらしい。で、Bill Monroeに結局「さて、もう君は僕のように弾けるんだから、自分の道を行きな」と言われ、オリジナル曲を作り自分のギグをするようになった。そしてその時点でBill Monroeのコピーをやめた。
そして、Billが亡くなった1996年、コピーをやめた時から亡くなるまでのBillの道をまたトレースしたそうだ。

昨年のライブの後最新のBill Monroeカバー集も含めいろいろ聞いていたのが良かったのか、今回のセットはすんなり入ってきた。Bluegrass色はかなり薄めで、ジャズが濃かった。特に印象に残っているのはHappy Birthday Bill Monroe、Shady Grove、Minor Swing、Opus。ここらあたりか。Garcia/ Grismanからの曲もかなりよかったし、あとWatson Bluesも渋かった。
GrismanのセットはドラムGeorge Marsh、ウッドベースJim Kerwin、フルートMatt Eakle、ギターGrant Gordy、フィドルMike Barnett、そして、マンドリンのDavid Grismanがソロを回しあうという形式で一切が進んでいった。
みなとても上手だが、曲によって「特に誰のソロが良かった」という感じになる。皆がソロを回し終わるまで曲が終わらないので、Grisman色は案外薄かったように思う。
さすがに彼のソロはどの曲でもピカいちだった。Lindleyもそうなのだが、ソロに対するアプローチの仕方が、ロック/ブルースからではないのでかなり異質に感じる。
Grismanの場合マンドリンというギターとは違ったシステムの楽器なので、ギタリストの自分からみたら「一体どこからそのソロを引っ張り出してきたの?」というような摩訶不思議な音選びのソロを、100年も前から親しんできたかのようにいとも容易に弾かれるのには参った。
バックグラウンドが違うというのが、まさにこんなところで強烈な個性となって現れることになる。
もじゃもじゃのひげをたくわえた大柄なアメリカ人が、おなかの上に小さなマンドリンを乗っけて身体を揺さぶりながら、ローラーコースターにのっているかの様な音をつむぎ出す。フレットの上をものすごい早さで指がタカタカタカタカと動き回る。
その様子はとてもコミカルだ。でも弾いている曲の印象からか、どことなくセクシーさがただよう。
Lindleyのようにエキゾチックな絵をくっきりと見せてくれるのでなく、Grismanのステージはどことなく匂う。ヨーロッパの街のにおいがする。アメリカ中部はアパラチアのヒルビリー達がたむろっているバーのにおいがする。

いずれにせよ、多国籍州カリフォルニアならではのショーだったと思う。
アメリカーナを基本にして、いろいろなものが、もちろん不純物も含め純度が高いショーだった。
行ってよかった。 

2012年10月28日日曜日

10/20/2012 Jorma Kaukonen @ Café Du Nord





生後数カ月の赤ん坊がいる友達の家に行く。
その子があおむけに横たわっていて、なにかを目で追っている。
はたしてその視線の先になにがあるか。何もないことが多い。
しかしその見えるか見えないかの目で、なにかをとらえているらしい。

すると突然口もとがゆるんで、笑みがこぼれてキャッキャとわらいだす。
私たちオトナには?な瞬間だが、とりあえずこっちも気分がよくなる。
パパがいいタイミングで「あーなんか楽しくなってきちゃったねー。いーねー」
ってなことを言ったりする。


このJormaのコンサート。私は赤ん坊になった。
なに考えることなく、そこにいるのが楽しい。
楽しくて愉快で、自然と手足をバタバタさせたかった気分だった。残念ながら席付き、とても静かなスウェディッシュホール二列目でバタバタさせられなかったが、はたから見たら自分は無邪気な赤ん坊のようだったはずだ。苦笑

Jormaは今まで数回見るチャンスがあった。大体Fur Peace RanchでのJormaの印象が強いので、今回はSFにいながら、Ohioにいるような気分だった。
今回のJorma ソロツアーは、Hot Tunaで一緒のマンドリンBarry Mitterhoffと一緒。前回のFillmoreでのJorma一人でのショーは自分の中で伝説化しているけど、今回はBarry がいるからかずいぶん印象が違った。

しっかりとかゆいところまで手の届いた絶対に間違わないアコースティックギターと、語尾がのび気味でうまい具合にギターとハーモナイズする声。寸分のスキもないステージだった。
エレクトリックギターでの電気の魔法がない分、ヨーマの温厚で誠実なキャラががっつり前面にでた。伊達や酔狂で音楽をやってきたわけじゃないというハードコアな面も、ちょっとしたリフやソロから唄へもどるタイミングとか、あちこちでみられた。
Jefferson Airplaneから数えて45年を超えるミュージックキャリア、おそらくこういうカントリーフォークこそ彼の本当にしたかったことに違いない。
すべてにおいて迷いがなく、芯が通っている。必要以上に上手くやろうと力を入れなくても、自然に唄もギターもJormaについてきていて、それを他の人が聴いて美しいと感じられるほどのレベルなのだ。
まさにあぶらの乗り切ったというか、もしあなたがアーティストだったらここにたどり着きたいという場所に今Jormaはいる。
こういう正真正銘のロックレジェンドのマジなショーを見ることができてとても幸せに思う。

Jorma Kaukonen And Barry Mitterhoff 23, 2012
The Swedish-American Hall
San Francisco, California
Saturday, October 20, 2012

First Show:
1. Search My Heart
2. Children Of Zion
3. Hesitation Blues
4. Sea Child
5. Full Go Round
6. I See The Light
7. Come Back Baby
8. I’ll Let You Know Before I Leave
9. More Than My Old Guitar
10. Izze’s Lullaby
11. Let Us Get Together Right Down Here
12. 99 Year Blues
13. Keep On Truckin’ Mama
14. 9 Pound Hammer
15. Encore: How Long Blues
Second Show:
1. Serpent Of Dreams
2. True Religion
3. Nobody Knows You When You’re Down & Out
4. That’ll Never Happen No More
5. Things That Might Have Been
6. Barbeque King
7. River Of Time
8. Bread Line Blues
9. Goodbye To The Blues
10. Good Shepherd
11. San Francisco Bay Blues
12. Uncle Sam Blues
13. I Am The Light Of This World
14. I Know You Rider
15. Encore: Genesis

2012年10月13日土曜日

10/10/2012 Steve Kimock @ Hopmonk



 バンドっていいよなーとつくづく思った晩でした。 

そしてこの日はなによりBernieが一番輝いていた。 
 

ツアー疲れが明らかだったSteve。もちろんいつも通り普通のロックショーの標準をはるかに超えた素晴らしいパフォーマンスだったけど、もっといい時のSteveを知っている自分としては、「あーツアーで疲れてるわ」ってのが目に見えて明らかだった。 

ソロでステージに立っているときは、そんな時どうにもならない。とにかくレベルを下げないように慎重に乗り切るしかない。 
でもバンドであれば当然ほかのメンバーが助け舟に回ることが必要になってくる。 

この晩Bernieは助け舟以上の活躍をした。 
恐ろしい集中力としかもポジティブなエナジーに満ち溢れ、PAから出てきている音が完全にBernieの今までの人生のかたちをしているかのようだった。 
たぶんこの日のBernieは一生忘れることがないと思う。怪物のようだった。 

今までに何十回とKimockのショーを見てきたが、ここまでKimock色の薄いショーはなかった。いや、Kimockはいつも通り出来る限りの仕事をしたと思う。ただただBernieがKimock以上に強烈な色を発していたというだけのことだ。 

思い返してみるとKimockのバンドにはいつも彼の好敵手となるようなメンバーがいた。そしてどういうわけか、いつもKimockが突出して輝いてしまうという結末が待っていた。言い方が悪いが、他のメンバーを食ってしまう。 
Crazy Engineで一緒だった時、Melvinはがっつり組み合ったけど、フィールドが違うところで戦っている感があった。Melvinはプロフェッショナルなエンターテイナーで、きっちり仕事をするタイプで、あえてKimockとは張り合わなかった。 
Bobby VegaはいつもKimockと対等に張り合う。たまに「勝負!」な感じになる。でも最近のKimockはレゲエ色の強い傾向があって、ちょっとKimockとはページがずれている感じがする。Kimockの方から、Bobbyとの距離を置いている感がある。 
Rodney Holmsとは相性がよかった。別れてしまったのは残念だが、Rodneyの攻撃的かつ手の多いドラマーと、いつも普通の人が見ていない別の世界を見ているKimockとの相性は絶妙だった。それでもRodneyがKimockを食ってしまったと思った事は一度もなかった。 
Phil Leshとも相性は絶妙だった。インプロの天才の二人が真っ向から音楽に取り組んでいる感じがとても気持ちよかった。でもRodneyもそうだけど、いいパートナーであり、リスペクトしあっている感じでお互い勝負する感じはなかった。 
注目していたBarry SlessもKimockと同じステージに立った時は、明らかにKimockにスペースを譲った。 

1999年10月21日、コロラドはデンバーのフィルモアでのPhil and Friends。Phil Lesh - bass and vocals, Steve Kimock - guitars, John Molo - drums, Billy Payne - keyboards, Paul Barrere – guitarというメンバー。このショーはCDでしか聞いたことがないのだけれど、私の中で5本の指に入るくらい最強のショー。なぜなら、Little FeatのPaul BarrereとKimockとのギターバトルが聞けるからだ。両者とも全然引かない。好戦的なまでにお互いジャムりまくっているのが一聴してわかる。ぜひ聞いてみてください。 
Kimockと他のメンバーがバトっているのを聴けるのはこのショーくらいだ。 
結局どのショーでも耳はKimockに向けてしまっている自分に気が付く。 

が、 

今回は違った。Bernieが完全にKimockを食った。 
ここまですさまじいショーは予想していなかったので本当にびっくりした。 

特にセカンドセット。ステージ上でKimockがあんなに心もとない感じで、嫉妬しているような若干不機嫌くらいな表情を見せたのは初めて見た。Bernie、良すぎたのだ。 
Bernieのソロも長かったし、音量もでかかったし、音色もかなりユニーク。しかもTalking Headsの曲になるとKimockはソロ弾かないし。今回のショーではFunkadelicの曲は全然やらないみたいで、BernieがVocalをとるのは全部Talking Headsの曲ばかりだったけど。Naïve MelodyにしてもBurnin’ Down the Houseにしても、10代の頃から、Stop Making Senseを聴きまくってきた自分としてはもう涙がちょちょ切れものだったし。 

とにかくBernie様さまな晩だった。キーボードが4台。この前は2台だった。その分音のバラエティも増えて、完ぺきだった。 
 

バーニーウォーレル 68歳。 
ファンクキーボードのパイオニアの一人。 
ファンカデリック/ パーラメンツの創設メンバー。トーキングヘッズと共演した作品、ストップメイキングセンスでの活躍が特に有名。現在はバーニーウォーレル・オーケストラを率いて活動中。2012年、サイドプロジェクトとしてスティーブキモックとツアー中。 
このDVDおすすめですよ。トーンが暗いけど。 
http://www.amazon.com/Stranger-Bernie-Worrell-Earth/dp/B000TV4QXM/ref=sr_1_7?ie=UTF8&qid=1350186142&sr=8-7&keywords=bernie+worrell 

しつこいようだが、この晩は一生忘れない晩になると思う。 

2012年10月8日月曜日

10/07/2012 Keller Williams, Steve Kimock & Kyle Hollingsworth Featuring Bernie Worrell, Wally Ingram & Andy Hess @ Golden Gate Park





Warren Hellmanという投資家でありミリオネアが2001年にはじめたこのHardly Strictly Bluegrassも今年で12年目。残念ながら彼は去年77歳でこの世を去った。 
一緒に行ったロビンも言っていたが、こういうフェスはここにしかない。 

タダ。 
すごいメンツがそろっているにもかかわらず、タダ。 
タダで、凄いラインナップということもあって、当然のことながら、いろいろな人が色々なところから色々な目的でやってくる。 
どんな理由であれ、人を集めるというのは大変なことだ。 
ピクニックがてらに来ましたという家族連れから、酔いどれのどうしようもなく始末に悪いのまで、そこで繰り広げられるトップレベルの音楽を聴きに来る。 

たまにこちらのコンサートで感じることなんだが、正直盛り上がりすぎて怖いと思う時がある。荒れているのではないのだ。みんなエキサイトしすぎて、「こいつら何をしでかすかわからないな」という瞬間がある。みんな酔って笑っておどっているんだが、その発しているエナジーが尋常ではないのだ。 

今日のショーがそんなショーだった。 

Keller Williams, Steve Kimock & Kyle Hollingsworth Featuring Bernie Worrell, Wally Ingram & Andy Hess。 



一見誰が主役だかわからないような焦点の定まらないメンバーなので、どうなることやらと思っていたら、想像した以上によかった。 
オーディエンスのエナジーがあったからか。 
キモックのナンバーは、なし。なしといっても、Come Together, 54-46は演ったけど、カヴァーだしね。
あとの曲は全部Kellerの曲だったか、聞いたことない曲ばかりだった。 
そんな慣れない場面でもSteve, Bernie, Andy, Wallyは、きっちりと自分の腕をみせ、他のメンバーの見せ場も十分作っていた。 
Steveが外部ミュージシャンと一緒にやるときに、ハードコアキモックヘッズの間で必ずでる不満が、「Steveのソロが十分でない」とか、「あいつがSteveの凄まじいソロをぶつ切りにした」というものだ。 

今回はそんな不満はまず出なかったと思う。 
それはKyle, Keller、二人がしっかりSteveがどんなミュージシャンで、客がこのステージに何を求めているかをわかっていた。そしてバンド自身もどうすれば一番見栄えよく、感じよく客にアピールできるかがわかっていた。 

つまるところ、私のようなスティーブしか見ていない人間でも、今回のショーで知っている曲は25%ほどであるにもかかわらず、知らない曲でもそれぞれSteveがソロを十分に弾いてくれたおかげで、全体的に見て大満足。 

気分よく「Keller William全然知らなかったけど、よかったよ」といえる。 
または、「KyleはBernieと一緒にプレーしているのを、エンジョイしていたよ。見ていてリスペクトが感じられて、本当に気持ちよかったわ」とも。 
「なんかいいミュージシャンで腕はあるんだろうけどさ…」じゃなくて。 

ほとんど作戦勝ちと言ってもよい出来だった。 
Hopmonk、水曜日が楽しみです 

2012年10月1日月曜日

9/30/2012 Furthur @ Shoreline Amphitheatre




プロフェッショナルなショーでした。
Shorelineはマウンテンビューにある大きなコンサート会場で、とてもコーポレートな匂いのする会場ですが、やっぱエンターテイメントというひとつの大きなワクに括られると、こういう会場は音響照明から客の扱い誘導まで、すべてにおいて慣れていて、イベントをする側としては便利な会場なんでしょう。
バンドもそれなりに集客力のあるバンドじゃないと、怖くてこんな会場では興行が打てないだろうなー。

それにしてもバンド、凄かった。
まずコーラスワークがバンド立ち上がりから比べて、格段にプロフェッショナルになtっていた。いかにもスタジアムバンドといった感じの、息をのむような一糸乱れぬコーラスワークにはびっくりした。

あとGuitarのJohnの居所がようやく定まってきた。というよりも、こちらで位置づけがようやくわかってきた。
Jerry役というのは一見派手で一番目立つように見えるけど、実はかなりきつい貧乏くじで、Phil & FriendsでもRatdogでも成功例はほとんどないように思える、少なくとも最近は。

99年、まだメンバーが流動的だったころののPhil & Friendsが未だに一番機能していたように思える。Steve Kimockがファーストギタリストで、Trey、Barry Sless、Jorma Kaukonen、Little Featのギター(名前、失念…ポール…なんだっけ…)などにセカンドギタリストとして回していたころだ。

今回元Dark Star OrchestraのJohn を見て聞いて思ったのは、結局邪魔にならないギタリストなのだ。PAから出てる音を聞くと彼がいかに他の弦楽器、しかも主役のPhilとBobbyを立たせようとしているのが手に取るようにわかった。
特にギター、Bobbyの直線的できつくコンプレッサーのかかった、とがった音に対して、Johnはややオーバードライブ気味でリヴァーブが深くかかったトーン絞り気味の音で来る。一緒に音を出していても、はっきり両者の違いがわかるし、音の性質上Bobbyの音の方がはっきり聞こえる分音量が大きく聞こえる。
Philとも出している音の音域が全く違う。ご存じのとおり、PhilはPhilにしか出せないあの複製不可能なベースラインを、トーン全開でやや中音域~高音よりで弾いてくる。


驚くべきことにキーボードのJeffとたまにかぶるのだ。JeffがハモンドB-3でコードを弾いている時、たまにJohnのギターのリヴァーブがかぶると、音が混ざってよくわからなくなった時が何回かあった。しかしこの二人はJeffがインプロでとんでもない冒険をすることがあるのに対して、Johnはいつも安全地帯を出ることがないという、プレイスタイルの違いがある。

コーラスの二人の声は相性抜群だし、あとドラマーのJoe Russo。今日はこの人のすごさがわかったのが一番の収穫だった。
Furthurのドラムは今まで全然みてこなかったが、今回、特にアンコールのSamsonでのドラミングをみて、Furthurはもしかしたらこの人のドラムでもっているのかもしれないと思うほど感動した。
アンコールにもかかわらず、とにかくよく手が出ている。しかも強弱がわかりやすい。
どこでタンブリンが鳴っているのかと数分探した。よーく目を凝らして見ると、彼が足で鳴らしていた。手は完全にふさがっているのはよくわかるし、シンバル系も鳴っていた。で、その上タンブリンですか?恐れ入りました。


セットリストもセカンドが異常にすごかった、サンドイッチがいくつあったか?
必須曲満載だった。Terrapin, China cat, St, Stephen, Eleven, China doll, Sugar Magnolia、本当にあれは何だったんだろうと思うくらいに、凄まじい選曲だった。Blues for Allahのエンディングティーズも嬉しかった。
本当にあれは何だったんだろ。魔法な夜でした。 

2012年9月30日日曜日

9/28/2012 Zigaboo Modeliste @ Sweetwater Music Hall





「Zigabooってどんなドラマー?」と聞かれたとしたら、「ファンクという新しい音楽言語を作り出したドラマー。」と答えます。 
Zigabooがいなきゃ、今名が売れて活躍しているドラマーの何人かは間違いなくいなかっただろうと思う。少なくともRodney HolmsはKimockと一緒にプレーすることはなかったはず。 
Jerryがいなけりゃ、Kimockは今の位置にはいなかった。というのと同じで。 

こんな偉そうなこと言ってますが、ファンクというのは個人的には極めてわかりにくいジャンルだった。日本にいるときはファンク、ジャズ、レゲエは三大謎だった。でもこっちに来てショーを見たら、なんのためらいもなく身体に入り込んできた。 

特にファンク。 
JBやSlyなど分かりやすいものを除いて、レコードでは良さが十分に伝わってこなかった、少なくとも私には。リズム主体で、色どりがなく一本調子で、「んー」。たまに「アー(濁音付きで)」とか言ってるし、そんな青筋立ててがなられても、しかもホーンも邪魔くさい…みたいな。全然わかってなかった。 
しかしショーを見ると、心地よくグルーヴに乗るには一本調子なリズムじゃなきゃならないし、下っ腹に響くにはベースはきつくなきゃいけないし、入るべきところでホーン系の楽器が入らなきゃならないし、たまに来る「アー(濁音付きで)」がたまらなく、気が付けばこっちも「アー(濁音付きで)」って叫んでいる。 

Zigabooに出会えたのは、本当にラッキーだった。 
とにかくハイエナジーで迫ってくる。数時間ほとんど絶え間なく叩き込んでくるリズム…クラベ(Not Fade Awayのリズム)がこんなに退屈じゃなく聞かせられるのはZiggyだからだと思う。 

会場の誰かが誕生日だったようで、おなじみの「Happy Birthday」の曲をやった。こういうのは結局ベタになってしまう事が多くあんまりほめられたことじゃないなーといつも思ってしまうのだけど、あんなかっこいいfunky happy birthdayは今までに聞いたことがなかった。 

最近は本当にラッキーなことにファンクに近い生活をしている。変な言い方だけど。 
Bernie Worrell、George Porter JrがKimockと一緒にプレーするのをFur Peace Ranchで見たばかりだ。ショーの後Steveに「FunkadelicとMetersってFunkのパイオニアが一緒に演奏したなんて、本当に信じられない」と言ったら、いちファンに戻ったSteve、目を輝かせ「本当にそうだよな!」って興奮した様子だったのを覚えている。 

Zigabooに話を戻すと、正真正銘のエンターテイナー+国宝級の腕の持ち主。金曜の夜ってことでオーディエンスが荒れ気味だったにもかかわらず、かなりfunkで燃え上がってました、Sweetwater。とてもシンプルなんだけど、そこにイレギュラーなおかずが入ってくる。でもビート自体は決して乱れることがない。しかもそのおかずがユニークで美味で仕方がない。 
いやはや参りました。 

このショーにはもう一つおまけがあった。 
ギターがお気に入りのChris Rossbachだったのだ。いやーたまんない。 
元SlyのBobby Vegaがベースでデュオとして活躍していた時期もあったが、最近はZigaboo一本みたい。キメ細かいギターワークは健在。Novax+Boogie+Stereo Memory manというかなりシンプルなセッティングから刻まれるリズムは完ぺき。しかもすべてねらってやっている感がすごい。ブレがない。Zigabooがメインの音楽監督だけど、Chrisは副監督ですね。細かな指示はChrisが出してました。Zigabooは声+ドラムってことで手いっぱいだからね。 

一か月くらい前のレイジーサマーデイズのステージも良かったが、今回は2セットという事でセットブレイク含め4時間。たっぷり最前で楽しませてもらいました。 

2012年9月13日木曜日

9/7 - 9/10/2012 Steve Kimock @ Fur Peace Ranch



バタバタな4日間。
まず、飛行機に乗り遅れるというアクシデントからはじまり、やっとこさコロンバスに着いたと思ったら友人Mikeyのギターが届いておらず。
問い合わせたらTexasに届いているという。全くむちゃくちゃ。



一旦クラスがはじまってからはようやっと落ち着いた。
いつも通りとても密なクラスが続く。
スティーブは時間を気にしない。全然時間通りでなく、朝も早くから夜も遅くまで可能な限りクラスルームでギターの話をしている。

実際のところはっきりと覚えているのは実はショーの方だったりする。
Steve, Johnのキモック組に、George Porter Jr, Bernie Worrellが一緒に演奏するという。
ショーのあと、Steveに「MetersとFunkadelicがユーと一緒にプレイするなんて、すごくねー?」というと「あーそうだよなー」
と感心されたご様子。
そりゃそうだ。

正直僕もこのショーをを言葉にする事が未だにできない。
すさまじかったのだ。

動画もアップされているけど、それでは全然伝わってこないんだよなー。




ショーの次の朝Jormaの嫁さんVanessaとちょっと話したのだが「こんなホットなショーは正直今までここでやったショーの中でも1、2を争うくらいだわ」
と言っていたのを覚えている。

ちょうどこの日にJack Cassadyの奥さんが亡くなって、みんなでショーの前に故人のために「南無妙法蓮華経」と唱えた。むちゃくちゃにショーがよかったのは、彼女がそこにいたからかもしれない。

ちなみにこれがセットリスト/ 使用ギターだ!
Set1
Congoman's chant - Get up Stand Up  /Gibson L4
You Are the One / Gibson L4
Franklin's Tower (George Porter on vocal) / White Strat
Phillie Mambo - Purple Haze tease / Gobson L4
Many Rivers to Cross / Gibson L4 and Supro lap steel
Red Hot Mama / Black Cripe

Set2
54-46 / Gibson L4
Come Together - Thrill is Gone - Come Together / Black Cripe
Five B4 Funk / White Strat
? Curtis Mayfield's cover (George Porter on Vocal)/ Scott Walker but not Phoenix
Take Me to the River w/ Jorma / Gibson L4 

Encore

Shuffle w/ Jorma / Gibson L4 and Supro lap steel

今回はGoing down the Road Feeling Badをみんなでプレイ!!


めでたしめでたし

2012年9月1日土曜日

8/24/2012 - 8/26/2012 Lazy Summer Daze @ Leland Meadow, Pinecrest

まずはこのフェスの頭文字に注目。…っつうことです。
キャンプ場+ステージ周辺はこんな感じ。










んーと、次にラインナップ。
金曜日:
メインステージ
Grasshoppers
Joe Craven Trio
Steve Kimock
レイトナイトステージ
Grasshoppers
Delta Nove

土曜日
メインステージ
Jugdealers
Sycamore Slough String Band
Col. Bruce Hampton
The David Nelson Band
Zigaboo Modeliste
The Dead Kenny G’s
Zero
レイトナイトステージ
Jugdealers
Jamie Janover

日曜日
メインステージ
Clan Dyken
Moonalice
George Porter Jr. and Runnin’ Parners
JGB featuring Melvin Seals
Garage a Trois
7Walkers
レイトナイトステージ
Xtra ticket

このメンツはどのフェスよりも凄いという事。
何が凄いか?
金曜、土曜とKimockがトリ。→ここに来なかったベイエリアの「Kimock Fan」は、はっきり言って偽物です。笑
土曜日のラインナップのすさまじさ。→数年前までよく「フェスするんだったらChris RossbachとBarry SlessとSteve Kimockを一緒のステージに立たせたいね」なんて夢見ていたのが、まさに現実に!!!

そして、実際現地に行ってみて気が付いたこと。
知らないバンドもいっぱいあったけど、捨てバンドゼロ。
誰のアイデアでこのラインナップになったかは知りませんが、私との趣味の相性は100%一致。
大体どのフェスでも、「何コレ」な一服休憩バンドがあるものですが、このフェスにはなかった。知らなかったバンドも超クール。
Grasshoppersのギターは完全にツボでした。見たい。ツアーしてたら行きます。
Col. Bruce Hampton。激渋。あと、何あのギタリスト。立ってラップスチール弾いてんの。しかも上手い。カーネルもギター、歌共に上手い。上手い上手い上手い。
Dead Kenny G’s。パンクジャズ。多分意見が分かれると思うけど、私はコレ系好きです。ぶっ飛びヒッピー系フェスには、こういうスパイスがなきゃ。しかしこれもめちゃ上手い。


あまりにもメガ級の快楽垂れ流し経験が為、ちょっとトピックを絞って、かいつまんで。
さぁ、がんばれ。

三大サイケ頭ギタリストの巻。
それはSteve Kimock, Barry Sless, Chris Rossbachのこと。
みなJerry Garciaの直の子供たち。
それが一日で見られたというのは、はっきり言って奇跡。
今までもなかったでしょうし、今後もないはず。

まず最初に現れたのはDavid Nelson BandのBarry Sless。
彼を表現してリリカル、抒情的という人がいるが、これじゃ何かよくわからない。「自分の感情をうまく表現して音にすることができる」という意味だろうけど、それでは上手なギタリストはみんなリリカルに当てはまってしまう。
あまり音楽を学問として学んだことがないから詳しくは解らないが、三連符というのがある。トリプレッツって言うんだっけ。「タタタ、タタタ」とくるリズム。これをBarry以上に美味く弾けるギタリストを、私は聞いたことがない。Scott WalkerのAttrezzoから紡ぎだされるこの三連符は大抵平坦に弾かれることはなく、大体「タタタ(大小大)」のような感じで弾かれる。しかもいつも、「タタタ(大小大)」「タタタ(大小大)」で弾かれるのではなく「タタタ(大小大)」「タタタ(小大小)」の様に崩すパターンも入ってくる。これが繰り返されると一つの波が重なりかさなり迫ってくることになる。
この波乗り感覚が聞いていてとても気持ちがいい。これがBarryのサイケ感なのだ。Jerryもこのテのリズムワークはとても上手だった。
なので彼のギターはとても液体感が充満していて、水が流れるような感じだ。
これがPete Searsの竹を割って捨てるような、縦型、直情的なベースと絡むとちょうど陰と陽が重なるかのような快感が走ることになる。
BarryとPeteは超サイケデリックである。ガッテンしていただけましたでしょうか?

次Chris Rossbachが、Novax Expressionを持って、Zigabooのギタリストとしてステージに出てきた。この人は基本はファンクギタリストだと思っている。
今までもSly and the Family StoneのBobby Vegaなんかとも一緒にCDを出してたり、Sly、Metersとくれば、やっぱりファンクが芯から好きなんだと思う。
ファンクはつまるところにリズム重視で、何かと休符の多いジャンルだ。
Chrisの特徴として、刻み上手いというところが挙げられる。カツンかツンと休符と休符の間を小さく埋める。そしてこの休符と音の間にわずかに聞こえるギターが弦にあたる音、これがとても美味だ。い~い音なのだ。
ミュート音と休符で聞かせるという、とてもユニークなギターなのだ。
覚えていらっしゃる方もいるでしょう。Jerryのフリルの付いたようなキラキラな音。80年代後半から、亡くなるまで彼のギターサウンドにはいつも透明虹色のフリルのような、ギターのアタック音があった。あれが、ここにもChrisの音にもあるんです。
で、ソロになると彼のギターは一気に豹変。らせん状の階段をニルヴァーナに向かって駆け上るような。そんなソロを聞かせてくれる。好きにならないわけないでしょう?
音楽の世界は時にとても数学的。3度、5度。それからC7, Dm5。2小節目からⅣへ移動。など数字が苦手な人には頭が痛くなるような世界。Chrisはそういった事がすべて頭の中に入っているはずだ。教会などに行くととても細かい幾何学模様のステンドグラスがあったりするが、たとえてみればそれがChrisのソロの世界だ。小さくきれいにカットされた三角やら四角やらがすごいスピードで空間を埋め、ハマるべきところにはまっていき、気が付いてみるとカラフルなステンドグラスのような音像が浮かび上がる。
直感まかせではなく、あくまで熟練の職人技。結果としてサイケなのではなく、彼の頭に出来上がっている図面自体がサイケ文様を描いている。Chrisはサイケ音像のアーキテクトというのが結論です。


さて次のZeroはわが師匠のSteve Kimock。
この人の出所はまったく分からない。何度聞いてもブルーズの影はあるけどブルーズでなく、ファンクの影はあるけどファンクでなく、レゲエかと思うとそうではない。
ジャンルで分けられないのは、彼の音楽はこういった既成のジャンルを完全に消化したうえで彼自身の感情と直結しているからだろう。自分がジャンルになっている、と言ってもいい。
すべてのギタリストがSteveのように自分自身の感情に直結していれば、ギタリストの数だけの音が出てくるわけで、とても興味深い音世界が産まれているはずだ。
どうであれ、彼のギターは”Inspiration move me brightly”というあの歌詞を思い出させる。とても直感的なもので、それを表現できるだけの訓練を積んできたのが目に見える。次のKimockは間違いなく現れない、Jerryがそうであったように。その瞬間瞬間を切り取る、直感こそが、キーワードだ。
彼のサイケデリアはそこにある。澄み切ったクリーントーンの奥底に、Steveという人を通して「ヒト」そのものが見えてくる。あなたのその目の前にいるヒト、自分も含めて、この地球上に、そしてこの時代に、偶然に存在し、偶然に関わり合って生きている。地球上に、この時代に、あなたはひとりしかいない。ポッと出てきたと思ったら、いろいろなものに翻弄され、流され、ある日にポッと消えてなくなる。その流れはその人の感情とは全く関係がない。
でも地球上に一人しかいないあなたでも、他の人とつながれる瞬間がある。例えばジャムの真っ最中、ちょうどこの音が欲しいと思った時、Steveがギターの弦をベンドしてその欲しい音を鳴らしてくれる、そんな時がある。その共時性こそが彼のサイケデリアである。
つまり、わたしたちはそれぞれ生まれてから死ぬまでずっと一人なのに、一人ではないときがあることを感じさせてくれる。錯覚かもしれない。でもその「欲しいときに欲しいものをもらえる」、母体内にいるような心地よさは一回味わったらおいそれと忘れられるものではない。この快楽は錯覚ではないことは確かだ。
このシンクロニシティ快楽はやっぱりライブじゃないと起こらない。ライブレコーディングでも駄目だし、スタジオでも駄目。その場にその時いないとその醍醐味は味わえない。その次から次へと起こる「不思議な偶然」は、あまりにも何度も起こるので、しまいには不思議でも偶然でもなくなってくる。つまりミラクルを信じ「物事はあるべき方向へ進むものだ」という半ば諦めのような感情にかわり、「んじゃ、どうせなら今を楽しもうぜ」という方向に向かうようになる。
以上、僕がSteve Kimock体験を重ねるうちにたどってきた道です。
音楽という枠を超えるものがあるでしょ。苦笑。

全然ライブレポじゃなくてすみません。


こぼれ話。
1.以前Daze BetweenというフェスがSFであって、そーへいさん、りっきーさんと一緒に行きましたよね。それと同じオーガナイザー。今回は初めてデカいフェスってことで、かなりの混乱がありました。
金曜日、私の仕事が遅くまであってスケジュールからみたら、Kimockはファーストセットは間違いなく見逃して、セカンドセットも途中くらいの時間に到着したんですが…最初からいた友人のマイキーに聞いたら、「まだファーストセットの4曲目だ」っていう。
あとで聞いてみたらKimock前にプレーしたJoe Cravan。ちゃんと時間に到着していたにもかかわらず、ゲートで「お前は出演するアーティストじゃないだろう」と止められ、中に入れずにコンサート開始が遅れたという、冗談のような話。
確かにJoeは胡散臭い風体(ごめん、Joe)の人だけど、「ステージ上はJoeはどこだ!?」ってなってたはず。セキュリティー気が付かなかったのかね。。。

2.土曜日のSycamore。David Gansがボーカルギターのバンドで、New Speedway Boogie演奏中、ステージ上の屋根が強風でぶっ飛んだ。ステージ真下で見ていたので、びっくりした。

こうだったのが 


こうなった 


けが人が出なかったのは不幸中の幸いだったけど、ショーは中断。復旧するのに2~3時間はかかって、土曜日のスケジュールも大幅に遅れ、Zeroが出てきたのは夜半過ぎ。12時半を回ったころで、終了したのは3時近く。標高が高い場所なので、気温が一気に下がって、むっちゃ寒かった。ステージ上もみんな手をすりすりこすりながら演奏。

3.客がいなかった。こんなにいいメンツなのに全然入っていない。アーティストへのギャラの問題も発生したらしく、当初土曜日の夜ステージに予定されていたBobby Vega Band、キャンセル。Bobbyは現れもせず。ガセ、ジョークだったというウワサもあり。でもそんな全然人が入っていないフェスだったので、アーティストは野放し状態。
Barry Slessとも初めて話した。
DNBの後、
私:「いいショーだったよ」B:「ありがとう」
私:「今夜Bobby Vegaと一緒に演るんだってね、楽しみだよ」
B:「いやー実はみんなそういうんだけど、僕は何にも聞いていないよ。どこでその話聞いたの」
私:「え……いやーそうなの?! ウェブサイトに載ってたよ。あーそーなんだ。そりゃかなり失望だな(よくも言ったもんだ…)。でも明日Moonaliceはでるんでしょ。」
B:「うん。それは確実だよ。」
私:「じゃ、それは楽しみにしてるわ、ありがとう。」
B:「ありがとう。」
とても柔和な人。
Chris Rossbachも赤ちゃんと奥さんと一緒に来てたので、近況報告。そこでもBobbyのことを話すと、「え、知らない」みたいな感じだった。赤ちゃんが凄くデカく、奥さんが凄く小さかったのが笑えた。
憧れのZigabooさんともお話しできた。9月にSweetwaterでギグがあるというので、ぜひ行きますと。あー緊張した。

とにかく最初から最後までかなりワイルドなフェスでした。
でもあんな楽しい思いをしたのは久しぶり。やみつきになりそうです。キャンピングもいいじゃんって思いました。

写真、あんまりなくてすみません。
唯一、ショーの写真(一日目のKimock) 

携帯、すぐに死んでしまいました。インターネット、携帯の電波なしの3日間。俗世を忘れ楽しんだフェスでした。

2012年8月29日水曜日

08/23/2012 Steve Kimock @ Mystic Theater



私はこのMystic Theater という会場のアコースティックが大好き。 
ちゅうっくらいの劇場で、ステージ前はスタンディング。半ばから後ろにかけて両脇に席。真ん中はバーでこれまたテーブルなんかがあって、程よい広さの二階も席付で。
12/09/2004はSKBの、ここでやったショーの録音。その音響の素晴らしさと、バンドのホットすぎるくらいの演奏でマイベストキモックショーのひとつになっている

以前Crazy Engineかなんかでここに来た時は満員。歩き回ることはほぼ不可能だったが、今回はどうだ。開演直前に行ったにもかかわらず、簡単に二列目に陣取ることができた。
やっぱ去年おととしと、ツアーしなかったあおりがここに出てきていると思う。
ハードコアなキモックヘッズ達が、どんどんストリングチーズだのサウンドセクターだのに逃げて行ってしまっている。

そんなファンはなんのその。
このショーは本当に今までの集大成のような、非の打ちどころのないショーだった。

まずDonna Jeanがゲストだった事がこのショーを余計にスペシャルにしたと思う。 

Crazy Fingers>Franklin’s Towerは本当にキモックのGrateful Deadに対するリスペクトが感じられる、水のたれるようなギターソロを聞かせてくれた。細やかでジューシーなあのCrazy Fingersは今までに聞いたどのCrazy Fingersよりも繊細でキラキラな感じだった。Bernieが素晴らしい仕事をしたのもこの二曲だった。


White Stratが返ってきた。 

やっぱりFive B4 Funkはこのギターじゃないとダメ。前のツアーでは他のギターで聞いたけど、線が細くてなんだかいやだった。ガツンとハマるのはやっぱりストラト。

もう一つだけ付け加えておきます。

アンコールのStella Blue。

あれはマジで鳥肌ものだった。ベストステラ。
水を打つように静かに、細心の注意を払って一音一音に感情をこめている感じ。
もともとキモックの住んでいたのはこのあたりだったから、そんな空気感が彼をそんな風にさせるのか、本当に特別な感じが漂ってました。
何か降りてきてるんじゃないか?と思ったくらい。 



追記の追記。個人的な事ですがこの日の朝Many Riversを弾いている夢を見たんで、この日のMany Rivers to Crossは僕にとっては特別の曲でした。いい思い出になりましたわ。



「ガー」 

7/18/2012- 7/22/2012 Kimock Summer Tour 2 of 2

よくここまでのばしのばしにしたなーの2回目。 

7/20/2012 Chrystal Bay Casino @ Crystal Bay 
さてさて次はTahoeということで東へ東へと。 
 





標高が高いこともあって、ちょっと肌寒く、空気も薄い。 


ホテルに着いて、さてスパでも行って昼寝でもすっか疲れてきたし。。。と思っていたら、前日Chicoのショーで知り合ったスティーブが今からサウンドチェックを聞きに行くと言う。 
んじゃ、ついてこうということで、一足先に会場に。 
そしたらいました、いました。 
Hey Menとかやってんの。いいねー、一足先にステージ近くまで。 

結局開演15分くらい前に会場をあとにしましたが、めっけもんでした。 
ラッキーでしたわ。 
WallyのおじょうちゃまがAdelの歌をその晩歌うってんで、バーニーの前で歌ってんの。バーニー必死に耳コピ。 
キモックはiPhoneでその曲のコード進行をググってたり、ステージ裏の世界はなかなか興味深かったですわ。普段こんなシーン見られないもんね。 

その晩ははっきり言って最初から最後まで完全燃焼。 
脂がのりに乗ってました。Santa Cruzに続いてホットのショー。ゲストもギミックもなし。ピュアなキモック体験でした。 
アコースティックも最高。 
 
もともとこの建物はとても古い建物で、ボーリング場だったものを改装して作ったらしい。とにかくいつでもここの音響は素晴らしく、すべての音がうまい具合にミックス、しかし個々の音がしっかり分離して聞き分けられるという。 
いつ来てもいいんです。 
アコースティックの面で言えばここと、PetalumaのMystic Theater。この2つが私の好みです。 
あと金曜日で、ベイエリアから3時間半ということもあって、水、木にいなかったコアなベイエリアのキモックヘッズたちがパラパラと集まり始めました。 
でもまぁ、それでもスペースは十分ありましたし、醜いテリトリー争いもなかった。 
そんなわけでもうそれこそ言葉にならないような、脳みそメルティング体験でした。 

「フォータイムズ!!」54-46ですね 
 

「いつもより余計に弾いております」なバーニーさん。 
 

「サンキューフォーカミングトゥザショー」(口癖;笑) 
 


7/21/2012 Fillmore @ San Francisco 

この日はお祭り的な感じ。 
前日のピュアなキモック体験からは程遠かった。 
ゲストとしてFreddie Rouletteがバンドに加わった。で、セカンドセットには元Modern Lovers, Talking HeadsのJerry Harrisonも参加したし、Deja怪人も来た。 
色々なゲストが参加したことにより、「いつものノリ」が崩れてしまった。タイトではなかった。 
ラップスティールギターブルースの祖、Freddie Rouletteは生で初めて見た。 
 
ずっと見たかったのでそれはものすごくありがたかった。 
しかし彼は、スペースをシェアしながら他のミュージシャンとジャムをするタイプの人ではない。どちらかというと彼はドミナントなプレースタイルで、ガンガンソロやフィルインを入れていくタイプで、バンドがそれにどう合わせようか迷っているのが見て取れた。 

こういうインプロ主体のバンドの鉄則は、「人がソロをしている間、他のミュージシャンは出しゃばるな」だ。もちろん例外はあるけどね。 
しかしFreddieは誰がソロを弾いている時でも容赦なく音をかぶせてくるので、がちゃがちゃになってしまったことが何度かあった。 

ただ彼がメインでSleepwalkをやったのだが、それの素晴らしかったこと。 
この日一番印象に残ったのは?と聞かれたら、迷うことなくSleepwalkと答えると思う。 
それくらいに目立ってよかった。 
彼はウェブサイトもないし、SFローカルなんだけど、どこでギグをやっているのか解らない。なんで、これは棚ぼた第二弾としては、嬉しすぎる驚きでした。 

Jerry Harrison, Bernie WorrellというStop Making Senseの二人が入ってTake Me To The Riverなんてのも盛り上がったし、Deja怪人の歌も、なんて曲かは知らないが、彩としては楽しかった。 
 

キモックリストで、このショーは散々な叩かれようだった、曰く「われわれはキモックを見に来たのであって、どこの馬の骨かわからない女性シンガーや、Jerry HarrisonやFreddie Rouletteを見に来たのではない。」云々。 
恐らくこのショーだけ見たならそりゃちょっとあんまり…な出来だったことは確かだが、Kimockという人はいつも「来るものは拒まず、去る者は追わず」で、マンネリをこの上なく嫌う。 
特にこのショーは来るものは拒まずの精神がより明確に出たショーで、コアなキモックショーを求めてきたファン達には不評だったろうが、土曜日のSFのイベントとしてはこういう華やかでよりどりみどりなショーもあってよかったのではないかと思う。 
 

最初の数曲の間、超低音のハウリングがひどく、参った。あれだけはいかんかったと思う。それ以外は私はとても楽しめた。 


7/22/2012 Moes Alley @ Santa Cruz 

ベイエリアから2時間半南。サンタクルズへは、友達のMikey, Luke, Diannaと一緒に行った。クレイジーな友達と一緒に行くショーは余計に楽しい。 

この日のショーは神がかった出来だった。 
Tahoeのショーもそうだったが、明らかにバンドは疲れているのだけど、そのために無駄が全然ない。タイトこの上なく、すべてがきっちり決まっていた。 

Henry Kaiserがゲストだったが、前日のようなルースさはない。というのもHenryがジャムバンドの作法をしっかり心得ているということがあったからだ。 
Its Up To You。素晴らしい出来だった。 
 

前にも書いたが、スティーブはのっている時は表情がなくなる。 
完全な仏頂面の時は大体燃えるようなジャムをしている時だ。笑う必要もなければ、他のメンバーとアイコンタクトを取る必要もない、ただ音に没頭している時は、表情がなくなる。 
 

アンコールのStella Blueは疲れも極限を超えたか、ばっらばらな出来でいただけなかったと思うけど、他は文句のつけようのない素晴らしいショーでした。 



ショーの後フロアでスティーブが息子のマイルスと話をしていたので「日本、楽しんできてねー、みんな待ってるんだからさ」と言うと「おう、そりゃいいな」とのこと。 
会場を出て一緒に行った友人たちがつるんでるところに行くと、バンドもそこにやってきた。 
バーニー、アンディ、ウォリーなんかがいるところに、ワイン片手のキモックもやってきた。「いやさ、そもそもラップスティールギターってのはね、アコースティックギターとエレクトリックギターとのはざまに生まれてきたもので…」ってな具合で、自然とギター講釈が始まったり。笑 

それをアシッドでファックトアップな友達が真ん丸な目で微動だにせず眺めていたり。 
こういうのっ見てるのって、いたって面白いわー。 

上手くいって気持ちがよかったのか、本当にバンド自体がいいヴァイブを発してました。 
ツアーマネージャーのハワードに「うちら全部のショー追っかけたんだぜ」って言って驚かれたり。せめてひとつの場所で2つのショーはやってくれよってお願いしておきました。 
Bernieも65歳で、こんなツアースケジュールはあんまりでしょ。って。