2013年2月16日土曜日

02/14/2013 Merl Saunders’ 79th Birthday Gala starring Keystone Revisited @ George’s Night Club


          2005年の9月14日。僕はBerkeleyのGreek Theaterにいた。 
一人旅でこっちに遊びに来た。目当てはJerry Garcia Tribute。没後10年をDead残党メンバーはもちろん、Jerryとゆかりのあったミュージシャン達と一緒に祝おうというイベント。
誰がいただろうか。思い出せるだろうか。
Bob Weir, Mickey Hart, Melvin Seals, Trey Anastasio, String Cheese、あたりがパッと思いついた面子だ。Philはいなかった。どうしていないのかと隣の人に聞いたら、なんだか自分の子供の学校の卒業式だとかなんだとかで、「なんだそれ」と思った。笑

で、一番ガツンと来たのがMelvin Seals。当時は名前も知らなかったのだが、Hammond B3でここまで持って行かれたのは初めてだったからだ。
Melvinのとなりにソファーをおいて座っていた大柄の黒人がいた。これが僕の最初で最後のMerl Saunders体験になった。彼は見るからにとても弱っていた。ふらふらとステージに出てきてドスンとソファーに座っているだけで演奏はしなかったが、Melvinのプレイを心底楽しんでいる様子だった。


おととしあたりにバークレーのいつも行く古書店にRainforest bandのDVDが格安で売っていたので買った。もうMerlが亡くなって久しく時間が経っていた。そのDVDにはMerlがオルガン、彼の息子Tonyがベース、でとても若いKimockがギターを弾いていた。


去年Jerry and Merlの4枚組ライブアルバム”Keystone Companions”がリリースされて、あまりのジューシーな音にやられた。Jerryのギターは水が滴るようだし、Merlのオルガンは曲によっては悪意を感じられるくらいファンキーでかっこよかった。とにかくぶっ飛んだ。毎日聞いていても全然飽きない。


そんな時にKeystone RevisitedというTonyのバンドが近所でMerlのバースデーギグをやるという情報が飛び込んできて、飛びついた。
San RafaelにあるGeorge’sというパブ。
9時半に始まると書いてあって10時半に「遅刻したー」と思ってパブに着いたのだが、バンドはまだサウンドチェック中という状態だった。
客は音楽目当てというより、むしろ家族か知り合い、またはたまたまその場に居合わせた酒をのみに来たバーの客という感じで、Merlのシーンへの音楽的功績を思い返してみるとなんだか寂しい感じがした。
ギグが始まる前からステージの前に陣取っていたのは僕だけだった。

まぁそんなことはどうでもいい。
演奏が始まったら、そんなことはどうでもよくなった。
メンバーはドラマーにBill Vitt (Jerry/Merl, Sons of Champlin,) ギターがMichael Hinton(Mickey Hart, Rainforest Band, Barry the fish Melton,) ベースTony Saunders (Jerry/ Merl, Eric Clapton, Ringo Starr, David Crosby,) キーボードがSteve Abramson (Living Earth,) Mitch Stein。この5人が基本のメンバー。それにゲストとしてギタリストMark Karan (Rat dog,) Pat Wilder, Barry the fish Melton, フルートMindy Canterが出たり入ったりした。
Harder They Comeがオープニングで、ファンキーな線のしっかりしたTonyのベースを軸にギグが進んでいった。
このバンドは自分にとっては初めてのバンドで1時間くらいどこを見ていいのかわからない状態だった。ただただ踊っていた。オーディエンスもいつもの顔見知りのオーディエンスと違うので、アウェーでひとり楽しんでいるような感じ。

Pat Wilderがステージに上がってギターを弾き始めた瞬間に安心した。救われたと思った。
これだこれだ。
この安定感とかっこいいブルーズの疾走感が、一人アウェーチームだったことを忘れさせてくれた。
Patricia Wilder。はじめてみた黒人女性のブルースギタリスト。歌も歌う。こーれがものすごくシブい。

どの曲もわかりやすい曲なのだが、リズム感が抜群なのと、ギターのドライな音質がMichael Hintonのウェットで滴るような音(短絡的で申し訳ないが、Jerry的なと言ってしまおう)、このバランスがやっといい具合になった。
Mark Karanもよかったのだけど、同じバンドに「Jerry的な」ギタリストが二人いると、本当にステージが湿っぽくなる。なんか暗かったのだ。
そこに竹を割ったかのような音のPatが入ってきてパッといいバランスになった。本当にほっとした。

ショーの後にTonyにとてもよかった。Happy Birthday to your Dadと伝えた。
彼はとても嬉しそうで、「ずっといてくれてありがとう。また来いよな、来てくれるよな」とハグをくれた。

ベイエリアでミュージシャンとして生活するのは大変なんだなーと思った。
とにかくスターミュージシャンがいっぱいいて、バンド内に「この人」というスターで実力もある人がいないと、オーディエンスはついてこない。この日も近くでDavid Nelson BandやDr. Johnのギグがあったし、Dirty Dozen Brass Bandなんかも近々このエリアをツアーする。
僕みたいな音楽狂以外は、ギグに行くと言っても、週に一回、多くて二回が限度だろうと思う。だからどうしても今回のようなちょっと小柄なギグはスキップされることが多くなる。しかもウィークデイだし。
大変だなーと思う。ギグが始まる前から終わるまで、ステージ前に陣取って2時間近く踊っていた自分に「またきてくれよ」というのはTonyのとても率直な気持ちだったと思う。バンドにとって踊っている客というのはとてもありがたいものだしね。
誰の知り合いでもつてでもなく、純粋に彼らの音楽を聴きに来たオーディエンスは多分多めに数えて15人もいなかっただろうと思う。
もったいない話だが、それくらい競争が激しいエリアなんだなーと改めて感じた。 

0 件のコメント:

コメントを投稿